2020年6月28日日曜日

夜間や休日に他の担当医の患者さんのことで看護師さんから呼ばれたら・・・

当直中や待機の時には自分の患者さん以外でも何かトラブルがあれば、

看護師さんからコールがあります

よくあるのは、転倒です

ある程度、呼ばれる理由も決まっていますし、やるべきことも決まっていますので、
カルテにはフォーマットとして作っておくのも選択肢かと思います
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(以下、記載例)

○時○分、 酸素化低下でコール

ナースより:検温でバイタル測定すると、SPO2 80%と低下あり
      夕食も普通にとれた、痰がらみはなし

バイタル:BP 60/40, P 88,  SPO2  80%, RR  20, T 36.8
     意識 レベルいつもより低下あり

訪室し診察
(S)

(O)

(A)
大腿骨頸部骨折術後、2週間目で数日前から歩行開始となっている患者さん
脳出血の既往あり、抗凝固薬の使用はしていない

鑑別:PE・・・

(P)

みたいな感じです
意識しているのは、

いつコールがあったか?
バイタルはどうか?

ということです
看護師さんのカルテに書かれていることが多いですが、
自分も意識していることを皆さんに伝えるために、あえて書きます
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さて本題

休日の待機:研修医の先生より電話あり

研修医「〇〇先生がみている患者さんで、酸素化低下で看護師さんよりコールがありました。

    大腿骨頸部骨折術後の90歳の男性で、リハビリ中でした
   
    先ほど急に酸素化が低下して、 
    SPO2 80%台になって、血圧も下肢挙上しても60/40しかありません。
   
    肺塞栓とか考えた方が良いでしょうか?」

T「そうだね、その状況ならPEは考えないといけないね。
  じゃあ、造影ルートで点滴とって、採血して、心電図とって対応しようか。
 
  急変時の対応はどうなってる?」

研修医「えっと、DNARになっています」

T「(DNARか・・・)
  了解です、もう少ししたら行きますね。

   家族も呼んでおいてもらえますか?」

研修医「はい、分かりました。」
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夜間や休日に他の担当医の患者さんのことで看護師さんから呼ばれたら・・・

①今の状況を把握する
②過去の人生や物語を知る
③未来を予測する

の3ステップで考えます


①今の状況を把握する

当たり前ですが、今の状況を把握するというのが大事です

何が起きているか?

大事なのは、バイタルと診察と看護師さんからの情報です
そして、最近の治療経過や薬の内容をチェックします

急変時の対応も確認します

注意が必要なのは、急変時の対応を確認されたのが、はるか昔ということもあるので、
いつ最後に家族と急変時の対応について、話合われているかも確認します

①の時点で、ある程度の鑑別疾患を想起し、次に何の治療や検査をすべきかを考えます
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上記の症例でもう少し情報を加えると、

頸部骨折は3ヶ月前で、それ以来、フレイルが進行し寝たきりの状態
今は嚥下が落ちてきており、
そろそろ看取りの可能性も出てきている人であった

食事はとれたりとれなかったりで、点滴も数日前に抜去していた
治療はデジレルしか内服はなかった

血圧はもともと80台で低かった
もともと 受け答えもyes,noくらい

診察しても 指示は入らなかった
血圧は生食が少し入って、80台に戻ってきていた

見た目はるいそうが進んでおり、ぐったりされていた
呼吸は浅い
四肢は浮腫はなく、痩せている
皮膚は乾燥していた 
冷や汗はなく、末梢は冷たい

内頸静脈の怒張はなく、JVPの上昇もみられなかった


ということで、鑑別は肺塞栓や心不全、心筋梗塞、肺炎、脱水が挙げられた

ポイントは、どこまで検査や治療をするかということです

そこを考えるために、過去の人生や物語を知る必要があります
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②過去の人生や物語を知る

人生の終末期に来ている人が、急変した時に侵襲的な治療をするでしょうか?

例えば、カテーテルやtPA、挿管、CV、昇圧薬・・・

もちろん、主治医に電話で確認することも重要ですが、
カルテ記載を見れば、ある程度分かります

カルテはその人の人生の物語の一部です

そして、

今の状態は物語の最後の1ページをみているに過ぎません


最後の1ページをみただけでは、その方の人生は分かりません

ということは、どんな治療をすべきかということも分かりません


時間があるのであれば、これまでの患者さんや家族と主治医の面談記録や
治療経過を確認することが重要です
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この患者さんの場合は、終末期にさしかかっており、
食事摂取も厳しくなってきている状況であった

主治医からも急変のリスクについてやその時の対応については、DNARであることも
今回の入院中に確認されていた
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③未来を予測する

この患者さんが肺塞栓だったとして、果たしてtPAや持続のヘパリン、カテ、手術するかどうか?

血圧が下がったら、昇圧薬使うか、ICU管理するか
酸素化下がったら、NPPV使うか、挿管するか

②が分かっていれば、そのような処置はしないという答えになると思います

となると、検査する意味はあるのであろうか?
どこまで検査すべきか?

という問いになります

ここからはケースバイケースで 、
家族や主治医と相談で話し合って決めるのが良いとは思いますが、
ちゃんとしたカルテが書いてあれば
カルテをみただけでもある程度の判断は可能です


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人手が足りない病院は、
止む無く主治医制(休日、夜間でも1st call1)になっている病院もあると思いますが、
今後、いつまでも主治医制をとることはできません

このコロナ禍では、
自分の患者さんのことで、自分が全部対応するのは難しくなってきています

いつ自分がコロナの濃厚接触者になるか、
いつ体調不良で休むまなければならないか、分かりません

考え方は「絶対に俺は休まない」ではなく、

「いつ自分が休んでも大丈夫なようにしておく」という考え方です


医者の仕事は属人化しやすく、そして属人化することは決して悪いことではなく、
むしろ美学である

という変な空気があります

(特に若いイケイケの医者と、昔のお医者様に・・・
 でも安心してください
 昔の自分はそうでしたので、人は変われます 笑)


私たちの仕事が属人化しないためには、どうすべきかを考えなければなりません

それは患者さんへの責任の放棄ではありません
むしろ患者さんのためです


属人化を防ぐとなると他の人にお願いする機会が必ず出てきます

カルテはそのためにあります

そのことを意識して、毎日のカルテを書きましょう

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