症例 90歳 女性 腰椎圧迫骨折で入院中
(※症例は加筆・修正を加えてあります)
認知症があり、ガランタミン内服中
他にはビオフェルミン、プロマック、酸化マグネシウム内服中
入院中せん妄になり、クエチアピン追加で落ち着いた
〜チームカンファにて〜
T「そういえば、昨日、ガランタミンやめたらどう?っていう話題になったよね。
どうする?やめる?」
学「そうですね。この方のせん妄は高活動性のパターンです。
ガランタミンによる賦活作用も誘因かもしれないので、やめるのも有りかなと」
S「一応、前医に問い合わせてみました。
意欲低下や認知機能低下があって、前医を数年前に受診されて、
ガランタミンが入ったようです。
そこから徐々に増量されていったようですが、効果は微妙のようですね」
T「なるほどね。
前医にお問合せしたのは、えらいね。
話は変わるけど、ポリファーマシーについてどんなメタファー(比喩)を持ってる?」
A「ポリファーマシーのメタファーですか???」
学「うーん・・・」
S「あかん、全然思いつかん・・・」
A「思いつきました。
意外になかったらなかったで、どうにかなるものっていう意味合いですかね?
例えば、高齢者における運転免許証とか。
意外に免許なくて運転できなくなっても、生活していける人もいますよね。
ポリファーマシーもその理屈で意外になくてもいけるじゃん?みたいな」
T「笑 なるほど。面白い。」
学「はい、いいですか?
えっと、偏見ですけど・・・
高齢の方の何枚も着ている厚着の服とか・・・ですかね。
そんなに何枚も着なくてもいいのに、って感じる時があります。
薬もそんなに入れなくてもいいのにって思います。」
T「なるほど!
何枚も服着ていて、逆に熱くて汗かいて脱水になって有害なこともあるかもね。
あとは服じゃなくて、周りの環境調整でどうにかなる時もあるよね。
薬(服)じゃなくて、他に目を向けよう!っていうメッセージもあるね。
いいね、うまいね〜」
A「僕の運転免許証が恥ずかしくなってきました(笑)」
T「だいじょうぶ。S君は何も思いついていないから(笑)」
S「思いつきません!」
T「自分の中では、ポリファーマシーはジェンガです。
薬には歴史があることが多い。
症状の経過や薬の積み重ねの上に新しい薬が乗っているイメージです。
だから僕らが、この薬なんて絶対にいらないでしょ!と思って勝手に中止すると、
絶妙なバランスだったジェンガが一気に崩れることがあります。」
A「ありますね〜
こんな薬いらないでしょって中止したら、全然ご飯食べられなくなってしまった人いました」
T「そうなんだよ。
僕らにはいらなさそうに見える薬でも、その人にとっては重要な薬のこともあるんだ。
だから安易にその薬の歴史も知らないのに、中止することは注意した方がいいね。
ポリファーマシーをどうにかしたい!っていう正義感の強い先生こそ注意だね。
今回はガランタミンを取り除くと、ジェンガが崩れそうな気がする。
逆に絶対にこのジェンガ(薬)は大丈夫でしょ!っていうのもある。
今回はプロマックだね。
プロマックが入る経緯は単純で、味覚の問題があって、
亜鉛が欠乏しているのが判明して、とりあえず処方。
っていうのが、ゴールドスタンダードだね。
プロマックは漫然と処方されやすいから、長期に内服すると銅欠乏を招くから注意が必要です。
そしてプロマックで味覚障害が治った人はみたことない(笑)
治ったとしてもプラセボの可能性が高い。
何かこの人の薬を減らすならプロマックと整腸剤だね。」
S「なるほど〜」
T「まあ、プロマックと整腸剤の歴史についても本当は調べた方が良いと思います。
メタファーにするのって意外に難しいでしょ?」
A「でも、面白いですね。」
S「そうだね。
物事の本質をつかまないと、何かに例えるのは難しいよね。
メタファーを使って表現できるようになれば、
その事象について深く理解していることになると思っています。」
S「なるほどー」
A「僕の昔の上司もよく言っていました。
回診の時にナースステーションにあるサボテンがあったんですよね。
そのサボテンを見て、
「おい、A。このサボテンの意味することわかるか?」
「いや分かりません」
「サボってんじゃねーぞ」
「・・・(苦笑い)」
ってことがありましたね。」
T「・・・それはメタファーじゃないな
ただの親父ギャグやん。笑」
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