昨日のNEJM のケースは、73歳の女性が皮疹が悪化してきたため、転院となった症例でした
皮疹が悪化してきて転院となることは、滅多にありません
重症の薬疹(SJS、TEN、DRESS)か、壊死性筋膜炎でデブリが必要な症例が疑われました
脱線ですが・・・
先日経験した症例は、カルバマゼピンを内服して8週間後に口腔内の痛みが出現し、
口唇や口腔粘膜がただれ、びらん・潰瘍を形成し、耳鼻科受診されました
視診のみでHSVが疑われ、抗ウイルス薬を処方されましたが、
粘膜病変は全く改善せず、数日後には全身に紅斑や丘疹、膿疱が出現してきました
皮膚科を受診されましたが、発熱もみられたため
皮膚科から内科に紹介入院となりました
血液検査では好酸球増多やリンパ節腫大を認めましたが、臓器障害はみられず、
カルバマゼピンに伴うDRESSと診断し、カルバマゼピンを中止し経過観察としました
抗てんかん薬に伴う薬疹はよく経験します
seizure . 2019 Oct:71:270-278.
このレビューではDRESSは内服後、1-12週間以内に出現すると記載されています
SJSやTENは5日から4週間以内のことが多いです
ピットフォールその①
内服後、時間が経ってから皮疹が出現するので、
薬疹であることを患者さんもDrも疑えない
DRESSを疑った場合は、2-3ヶ月前までの処方を見直す必要があります
ピットフォールその②
全身の皮疹ではなく、粘膜疹が最初に出現することがある
少ない経験ではありますが、皮疹の前に粘膜疹(咽頭痛、口唇のただれ)から出現し、
診断に難渋したことがあります
喉の痛みが主訴でくるので、扁桃炎のカテゴリーで考えてしまうのですが、
何にも当てはまらず、既存の疾患群(溶連菌、IM、水疱性類天疱瘡など)っぽくもありません
その割に痛みが強いので困った挙句、HSVとして対応することが多いです
ですが、数日から1週間後くらいすると、全身に皮疹が出現し、
2ー3ヶ月前のお薬を見直すと、カルバマゼピンやラミクタールが入っていましたね・・・と気が付くことがあります
重症薬疹が全身の皮疹を伴わずに粘膜病変、
特に喉の痛みで来ることは知っておくと、いつか役に立ちます
DRESSとしばしば鑑別になるSJSの診断基準の副所見にもかかれていますが、
痛みでご飯が食べられなくなるほどです
副所見
3.全身症状として他覚的に重症感,自覚的には倦怠 感を伴う.口腔内の疼痛や咽頭痛のため,種々の程度 に摂食障害を伴う.
原因不明の喉の痛み(近医で抗生剤ローテーションがされていることが多い)を見たら、お薬を1-3ヶ月前に遡って確認してください
そして、全身の皮膚をチェックしてみてください
ピットフォールその③
急性の症状であり、腫瘍を忘れがち
DRESSの診断はとても難しいです
皮疹だけでなく、病歴や血液検査など総合的に考えて診断を下します
DRESSもSjSも粘膜疹はどちらも出現するので、
皮疹では見分けられないと割り切った方が良いでしょう
重症薬疹は急性の症状であり、発熱や皮疹が目立つため、
まずは感染症(麻疹、風疹、EBV、HIV、梅毒、播種性淋菌、IE、リケッチア、マイコ)を疑いたくなります
もちろん、その思考でよいのですが、
感染症ではなさそうだとなった時はギアチェンジのタイミングです
本当に薬疹で良いか、自己免疫疾患や腫瘍があるのではないか?という思考になります
自己免疫では、特にSLEやAOSD、菊池病が鑑別になることがあります
そこで自己抗体など測るのですが、陰性で帰ってきます
やっぱり薬疹(DRESS)かな・・・と考え、TARCやHHV6を測ろうかなと考えます
臓器障害も出てきたし、そろそろステロイド入れようかと思った時は注意が必要です
内科医が原則として心得ておくべきことは、
DRESSやSJSとしてステロイドを入れようした時には、
必ず皮膚生検やリンパ節生検を行ってから入れるべきということです
典型的でない薬のDRESSの場合、DRESSの診断は慎重になるべきです
特にもともと皮膚疾患(難治性のアトピー、乾癬)がある人の場合は、
診断が難しくなります
皮疹自体が長年の名残なのか、活動性があるのか、いつからなのか?が悩ましい時が多いです
そもそもの「アトピー」や「乾癬」の診断が違っている時があり、
最初からT細胞性リンパ腫の可能性があります
まとめ
・DRESSの診断は慎重に行う
・被疑薬が2-3ヶ月前に入っていることもあり、そもそも薬疹を疑いにくい
・粘膜疹から始まる重症薬疹がある
・重症薬疹と診断し、ステロイドを使う前には必ず皮膚生検を行う
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