腎臓の役割はたくさんありますが、
メインは尿を作ることです
血液の余分なものを尿として排泄することで、
体内の血液をきれいにしてくれています
ただ尿を作っているのではなく、
状況に応じて適切な尿を作っています
水分が多ければ、水分多めの薄い尿を作ってくれます
脱水の状態であれば、水分少なめの濃い尿を作ってくれます
尿を出すことによって、
酸塩基平衡や電解質、体液量、血圧を適切に管理し、
尿毒素物質の除去や薬物の排泄・代謝を行なっています
このように私たちは考えなくても、腎臓が勝手にいい感じの尿を作ってくれています
私たちが自由に食事をしても血液データが一定でいつも通り生きていけるのは、腎臓のおかげです
唯一、食事で気をつけなければならないことは塩分をとることです
塩分がないと人間は生きてはいけません
今は塩がありふれており、逆にとりすぎることが問題になっています
ですが、昔は逆でした
我々の祖先は海から陸へ上がり、塩分をとることが難しくなりました
そのため、塩分を体にためこむ能力を身につけました
塩分をとると美味しいと感じる嗜好性(inを増やし)と
RAAS(レニンアンギオテンシン系)やTGF(尿細管糸球体フィードバック)です(outを防ぐ)
このように腎臓で尿に塩を捨てないようなシステムが出来上がりました
今ではこのシステムが逆効果になっていて、塩分過多が問題になっています
時代の変化に体が追いついていないのです
体が変わるのはまだ時間がかかるので、ブロックすることが治療になります
RASを抑えるRAS阻害薬やTGFに関わるSGLT2がその代表です
腎臓は生命維持に欠かせない臓器です
大事な臓器には、autoregulation機能が備わっています
つまり、血圧が多少変動しても臓器への灌流は保たれるシステムです
autoregulation機能は主に①筋原生反応、②TGFがあります
筋原生反応は輸入細動脈の圧力を感知して、
血管平滑筋が反応して輸入細動脈を収縮させたり、拡張させたりする反応です
これは数秒で行われます
この機能のおかげで、血圧が高くなっても低くなっても糸球体内の圧は一定に保つことができます
自己調節できる血圧の範囲は人それぞれです
慢性的に高血圧の人は高めに設定されていることが多く、
敗血症の際にMAPを少し高めに管理するという戦略が生まれます
腎臓の機能が低下するとどうなるのでしょうか?
CKDになると尿は出ますが、適切な尿が出しにくくなります
そうなると塩分を適切に排泄することができず、少し塩分を多めにとっただけで、
体に蓄積するため、血圧が上がったり浮腫として現れます
そのため、食生活に制限がどんどんとかかってきてます
食生活でも代償できなくなれば、
腎代替療法を検討しなけれなならなくなります
ですが腎代替療法の代表である血液透析では、腎臓の全ての機能を補うことはできません
健常者の糸球体濾過量は60ml/分に対して、
ダイアライザを透過する血流量(Qb)は200ml/分です
3倍近くの濾過量がありますが、透析は1日4時間を週に3回しか行なっていません
つまり血液透析では12時間/週の稼働時間で144L/週の血液を処理していますが、
腎臓は168時間/週の稼働時間であり、605L/週の血液を処理しています
透析時間は長ければ予後がいいこともわかっています
血液透析よりも移植の方が予後も良好です
血液透析はギュギュッと短時間で無理やり、腎臓っぽいことをしていますが、
腎臓の代わりにはなりません食事の制限が発生したり、透析で改善しきれなかったPやKに関しては、
吸着薬を使うことで肩代わりします
他にも血圧や骨代謝、副甲状腺機能のトラブルなど多くの問題が発生します
そのため、血液透析の患者さんは大量に薬を飲んでいる人が多く、
ポリファーマシーにならざるを得ないという実情があります
腎臓→血液透析+食事療法+大量の薬でどうにか代償しています
さらに血液透析と薬の調整は他人が手動で行なっているという、異常事態です
透析室で腎臓の代わりにDWを調整したり、薬の調整をしていると、
腎臓って賢いなあ・・・とつくづく思います
血液透析でDWや薬を調整して腎臓の代わりをするのは、
飛行機を手動で飛ばしているようなものです
次回は「透析は飛行機を飛ばすようなもの」です
・腎臓は賢い臓器
→どれだけ食べても電解質や酸塩基平衡が一定なのは、腎臓のおかげ
・腎機能が悪くなるとそうもいかなくなる
→尿は出るが、とっても薄い尿や濃い尿を作れなくなる
・血液透析は腎臓の代わりにはなり得ない
→透析ができること、できないことを知っておく
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