2022年7月21日木曜日

「昨日元気で今日ショック」の先へ

 完全な私見ですが、

進行が激烈な細菌感染症の順位を考えてみました


ただし、Airwayによる窒息(喉頭蓋炎)や肺塞栓、
IEの弁膜破壊、大動脈瘤破裂、輸入感染症、心筋炎は除きます


青木眞先生の格言の「昨日元気で今日ショック、皮疹があれば儲けもの」をさらに一歩進めた感じです



1位:Clostridium perfringens Septicemia 
  with Massive Intravascular Hemolysis



JJAAM. 2021; 32: 453-8

一位は前回の症例のClostridium perfringens の劇症感染だと思っています

数時間、多くは24時間以内に亡くなることが多く、
血液培養が生える前に亡くなってしまう疾患です


Clostridium perfringens の劇症感染の特徴は、血管内溶血です


Clostridium perfringens は血中に存在し、
産生する毒素によって全身の血液が溶血を起こし、
O2供給量が急激に減少し、ショック・多臓器不全から死に至ります


この病態に出会ってしまったら、救命は非常に困難です


肝膿瘍を伴うことが多く、ドレナージは必要ですが、
DICが進行してしまった状態で、PTADや外科的開腹ドレナージを行うことで、
出血傾向がさらに悪化することがあります

ドレナージ部位からの出血で出血性ショックをきたし、
全身状態が悪化し、死亡に至ったという報告もあります

Am J Case Rep.2016;17:219-23.


この病態はくも膜下出血のレベル300の超重症な症例に出会った時のような絶望感に似ています



2位:Waterhouse-Friderichsen 症候群
  (髄膜炎菌、その他)


WFS は発熱、チアノーゼ、皮下出血、ショックを主症状とし
急速な経過をとり 24 時間以内に死亡する稀な疾患です


いわゆる電撃性紫斑病です

重症敗血症に伴う副腎出血による急性副腎不全が病態の特徴です


致死率は60%、発症から平均20時間で死亡するという報告もあります

WFSの80%は髄膜炎菌とされますが、他の菌でも起こります





3位:OPSI:overwhelming postsplenectomy infection
(カプノサイトファーガ、肺炎球菌、髄膜炎菌など)


OPSI は脾臓摘出後数日から数年を経て感染症を発症し、
短期間にショックや DIC が激烈に進行し、
50% から 75% と高い死亡率が報告されています


脾臓は食菌・浄化、 特異的免疫応答、オプソニン産生を行うとされており、
脾臓摘出者ではこれらの機能が失われており、
重篤な感染症を引き起こすといわれています


肺炎球菌のoverwhelming postsplenectomy infectionは
48時間以内の死亡率が50-80%とも報告されており、
激烈な経過をたどります




上位3つは適切にマネージメントを行っても来院した日に亡くなってしまう可能性があります



次に早いのがこの3つかなと


4位:劇症溶連菌感染症によるTSLSや壊死性筋膜炎


5位:黄色ブドウ球菌によるTSS


6位:肝硬変の人の壊死性筋膜炎
Aeromonas hydrophila(淡水)、Vibrio vulnificus(海水)



これらの疾患は歩いて来院したと思ったら、
次に見に行った時にはショックになっていることが多いです



電撃性〇〇や劇症〇〇、壊死性〇〇と冠名がついている疾患や
毒素が絡む疾患は、本当に進行が早いです


いずれも早期のドレナージが救命には必須です



そして、次に早いのがこの3つかなと


7位:閉塞起点のあるGNRによる敗血症性ショック
(急性閉塞性化膿性胆管炎、尿路結石嵌頓の腎盂腎炎)


8位:FN:発熱性好中球減少症


9位:Weil病(黄疸出血性レプトスピラ感染症)


Weil病に関しては、早期診断が難しいのが悩ましいです

そして、この疾患が恐ろしいのは、
抗菌薬初回投与後 1 時間以内に悪寒・ 発熱・血圧低下・低酸素血症が起こり、
病状が急変することがあります

初回の抗菌薬投与により、殺菌された菌体成分により Jarisch-Herxheimer 反応が起こるためです


逆にこの反応を見ると、
やはりレプトではないか?とさらに疑いを強めることになります


まとめ

1位:Clostridium perfringens Septicemia 
  with Massive Intravascular Hemolysis

2位:Waterhouse-Friderichsen 症候群
  (髄膜炎菌、その他)

3位:OPSI:overwhelming postsplenectomy infection
(カプノサイトファーガ、肺炎球菌、髄膜炎菌など)

4位:劇症溶連菌感染症によるTSLSや壊死性筋膜炎


5位:黄色ブドウ球菌によるTSS


6位:肝硬変の人の壊死性筋膜炎
Aeromonas hydrophila(淡水)、Vibrio vulnificus(海水)

7位:閉塞起点のあるGNRによる敗血症性ショック
(急性閉塞性化膿性胆管炎、尿路結石嵌頓の腎盂腎炎)


8位:FN:発熱性好中球減少症


9位:Weil病(黄疸出血性レプトスピラ感染症)

0 件のコメント:

コメントを投稿

気腫性骨髄炎

 

人気の投稿