強い後頚部痛がある人
めまい、吐き気が強い人
ふらふらして、まっすぐ歩けない人
急にむせるようになった人
などなどです
入口はたくさんありますが、よく出会うシチュエーションは
やはり「めまい」でしょう
めまいの時には、末梢性 vs中枢性となり、
中枢性の代表的なめまいが、ワレンベルグ症候群や小脳梗塞です
ワレンベルグ症候群を疑ったら、
自分の中では眼鏡をかけ直すイメージで、丁寧に診察を行います
眼と頭をワレンベルグ様に切り替えます
「ワレンベルグを疑って診察します!」と心の中で宣言して、
診察に入ります
カルテも誰が見ても、ワレンベルグ疑っているカルテだなあ
と分かるようにアピールします
例えば、
瞳孔の左右差なし(部屋を暗くして観察したが、左右差みられず)
とかです
ワレンベルグのように見えているのに、
疑わないと見逃す病気や徴候は実はたくさんあります
感染症の中では、IEが有名です
見えている人には、IEにしか見えませんが、
見えていない人には、何も見えません
狙って聞かないと、心雑音は聞こえませんし、
体位を変えないとARは聴取できないかもしれません
ワレンベルグ診断のPit fall
・病歴
めまいや吐き気が強い人は、それどころではないので、嚥下が少ししにくいことや後頚部の痛みをしっかり伝えてくれないことがあります
ワレンベルグで有名な徴候をROSでとりにいくのは、難しいこともあります
なので、病歴でひっかからなくても、除外しないようにしましょう
・身体所見
普段のルーチンの神経診察ではとらないような、ホルネル徴候(部屋を暗くする)であったり、カーテン徴候であったり、開鼻声を狙ってとりにいきます
つまようじでチクチクしたり、氷を持ってきたり、部屋を暗くしたりと、
ひと手間かけることがコツです
軽微な小脳失調を優位ととるか迷うことが多いですが、
ここがポイントです
小脳の所見の一つがグレーな場合、どう対応しますか?
①「この文脈で」、「この所見!!」という考え方をします
つまり
「ワレンベルグ疑い」という文脈で、
「右利きの割に、右手の方が不器用さがある」時には、
やはり優位ととる
といった具合です
②時間をあけて再現性があるかどうかをみる
ただしこの場合、TIAであったり、RCVSであったりすると、所見がなくなってしまう可能性があり、注意が必要です
③他の先生にも一緒に診察してもらう
これが一番現実的でしょうか
ただし、一人であれば使えない手です
そこで、
④小脳の診察法をたくさん知っておく
これが一番便利です
小脳所見の診察は皆さんどれくらい知っていますか
半球と虫部で症状が異なるので、まずはそこからです
正中の虫部がやられると、体幹失調が起こります
歩行や姿勢に問題が出てきますが、四肢には大きな問題はありません
臥位から坐位に体位変換する時に注目してみてみると、
やたらと足を大きく上げたり、体が屈曲したりすることから疑います
坐位を保持するのに、いつも柵につかまっているかもしれません
半球がやられた場合は、測定障害や協調運動障害、企図振戦が出てきます
簡単にいうと、距離感が分からなくなります
発語の場合、言葉と言葉の距離が分からず、断綴言語になります
眼の動きも同じで、眼がover shootして
目標物を通り過ぎてしまい、行き過ぎてから戻ってくるような目の動きをします
医学的でない言い方でいうと、
ガチャガチャした印象を受けたり、泳いでいるような目になります
上肢の誘発法は指鼻指試験が有名ですが、
Stewart-Holmes rebound phenomenonや指タップ、肩揺さぶり試験を追加すると
さらに感度も特異度も高くなるでしょう
特に指タップは簡単で鋭敏なので、お勧めです
親指のしわのところにめがけて、人差し指を立てて、
とんとんとリズムよく、続けてもらいます
パーキンソニズムがあると、リズムが悪くなり、振幅が小さくなります
小脳失調があると、たたくポイントが毎回ずれる所見が得られます
このように指鼻指試験が若干、拙劣かなと思った場合は、
他の小脳所見をとりにいくと、
あーやっぱりこれも異常、これも異常
という積み重ねで、異常が明確になり、
自信をもって小脳失調があるという事ができます
・MRI
後方循環系の脳梗塞はすぐにはDWIで光らないこともあります
時間をあけてとったり、thin sliceでとったり、矢状断でとったりする工夫がなされます
以上のように各所で、pit fallがあり、
時間経過とともに症状も明確になっていくため、
後医は名医になりやすい疾患です
だからこそ、あの時の診察では、こうだった!
と自信をもって言えるように、診察の内容をしっかりカルテ記載しておくことが重要です
ワレンベルグを疑った時
・細かい診察も大事だが、心意気の方が大事
・イメージは眼鏡をかけ直す感じ
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