副鼻腔炎に伴う危ない合併症の中に鼻性眼窩内合併症があります
これには分類があり、chnadler分類というのが古くから提唱されています
その中のgroupⅤに位置するのが、海綿静脈洞血栓症です
疑うポイントは
「頭痛や発熱が数日続き、ある時、急に目が腫れてきた
目を動かすと痛い、ものが二重に見える」
こんな症状があれば疑ってください
そしてCTを撮ると思いますが、見るべきポイントは眼静脈です
海綿静脈洞には上下の眼静脈が流れ込みます
そのため血栓ができると、眼静脈のうっ滞が生じて左右差が見られます
疑ったら造影CTとMRIを行って確定させます
この病気に出会うことは医者人生の中で1回あるかないかだと思います
それくらい稀な病気です
ただこの疾患を知ることで、海綿静脈洞とはなにか?
という解剖学的な知識の復習になります
局所解剖に強ければ、次に何が起こるかを予測できます
海綿静脈洞の局所解剖について
海綿静脈洞は、下垂体の両側にある硬膜静脈洞です
下には蝶形骨洞が位置しています
海綿静脈洞は静脈が集まるハブ的な存在です
眼や歯、顔の中心部、副鼻腔、扁桃からの静脈が流れ込んできます
そのため、これらの部位に細菌感染症があると、
細菌が静脈を伝って海綿静脈洞に流れ込むことがあります
これらの静脈には弁がないことも感染を起こしやすい原因と考えられています
そして海綿静脈洞の内部には小柱がたくさんみられ、ここで細菌がトラップされると考えられています
海綿静脈洞には静脈だけでなく、内部に神経も集まっています
主に眼に関わる神経が内部を走行します
海綿静脈洞血栓症(CST)ではこれらの脳神経が障害を受けますが、全ての神経がやられるとは限りません
その中でも外転神経は内側部にあるため、炎症の波及などで障害を受けやすく、目の外転障害がみられることが多いです
海綿静脈洞の中には内頸動脈も走行しています
そのため、内頸動脈瘤が海綿静脈洞で破裂すると、
内頸動脈-海綿静脈洞瘻になります
この病態も目が飛び出てくるので、CSTの鑑別になります
海綿静脈洞は前後で左右の海綿静脈洞と繋がっています
そのため、片側の眼が腫れたと思ったら、
1、2日後には反対側も腫れてしまうということはあります
海綿静脈洞に炎症が波及していくと、下垂体にも炎症が波及していくことがあります
下垂体機能不全に陥る可能性もありますので、
治療中にショックをきたした場合、副腎不全も考慮します
背景:歯科や耳鼻科治療歴があり、副鼻腔や歯の治療がこじれている人
糖尿病があったり、ステロイド内服中の人はリスクです
眼窩蜂窩織炎は小児に多い疾患ですが、どの年代でも起きます
部位:海綿静脈洞の炎症や血栓が起きます
海綿静脈洞には眼静脈が流れ込みますので、そこに血栓ができると鬱滞して、
目が腫れてきます
眼窩蜂窩織炎も鑑別になりますし、合併していることもあります
きっかけは、副鼻腔炎が多いです
特に蝶形骨洞や篩骨洞の炎症の場合に起きやすいです
副鼻腔炎以外にも歯科感染症や顔面の感染症(面疔)でも起こります
微生物:副鼻腔炎をきたす菌が多いですが、
黄色ブドウ球菌が最多とされています
重篤な病態であり、嫌気性菌を含めたカバーが必要なことが多いです
髄膜炎の合併も懸念されるので、髄膜炎doseで開始する方が無難です
腰椎穿刺も行っておいた方が良いでしょう
治療:抗生剤の投与は当たり前です
大事なのは、ドレナージできる病態がないかを探すことです
原因となった蝶形骨洞炎や眼窩の膿瘍、硬膜下膿瘍がないか探します
耳鼻科、脳外科、歯科・・・他科との協力が必要になることが多いです
血栓があるため、抗凝固薬も行われることが多いです
ヘパリンにて治療が開始されます
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