2019年3月8日金曜日

片側の目の周りを痛がる人

片側の目の周りを痛がる人をみたら、どう考えたほうがよいのでしょうか


国際頭痛分類 第三版 ベータ版をみると、

第一部:一次性頭痛

第二部:二次性頭痛

第三部:有痛性脳神経ニューロパチー・他の顔面痛及びその他の頭痛

となっています

それぞれの疾患をすべて考えなくてはならず、

とても大変ですが、



結局、頭痛の場合の構図は、

一次性 VS   二次性です

一次性と言われる頭痛には、

片頭痛

緊張型頭痛

三叉神経・自立神経性頭痛(TACs)

その他の一次性頭痛疾患

があります


ポイントはそれぞれに対抗馬・mimic、

つまり二次性に起きてくる疾患があり、

二次性をいかに除外するかということが重要です



・片側の目の周りを痛がる人をみたら

考えるポイントは2つです

「視力予後」と「生命予後」

この二つの軸で鑑別をたてるとよいと思われます



①眼科疾患の可能性を疑う:視力予後

目、もしくは目の周りが痛い人に対して、

眼科疾患を思い描くのは当然でしょう

目の診察(毛様充血、眼球圧迫で圧痛あるか、視力低下など)を行い、

緑内障やブドウ膜炎、眼内炎といった危険な眼科疾患をチェックします

疑ったら、すぐに眼科コンサルトしましょう



②GCA(巨細胞性血管炎)の可能性を疑う:視力予後

巨細胞性血管炎(側頭動脈炎)に伴う頭痛の性状は様々です

神経痛様の頭痛の時もあります

なので、高齢で新規に発症した場合、

いかなる性状の頭痛でも、GCAを疑った病歴や診察を行います

疑えば、血液検査でESRやCRPをみましょう



③細菌感染症を疑う:生命予後

目の周りの感染は脳に近いため、危険です

特に歯、副鼻腔、顔面に感染がある場合、静脈にのって

感染性海面静脈洞血栓を起こすことがあります

感染の波及により髄膜炎や脳炎、脳梗塞、下垂体壊死を発症することもあり、

致死率は30%とも報告されています

そのため、発熱を伴った目の周りの痛みは、

血培をとり、画像評価(MRI)の閾値を低くしましょう

髄膜炎の合併があると考えれば、ルンバ―ルも早期に行いましょう



④下垂体疾患を疑う:生命予後、視力予後

もともと下垂体腺腫がある人に、下垂体卒中が急に発症することがあります

下垂体卒中では、中枢性の副腎不全となるため、

時に致死的になります

大きいものでは、視交叉の圧迫が強い場合、視野障害も伴います

その場合、早急に除圧を行わないと、視覚に障害を残すため注意が必要です


そして、何より下垂体卒中を疑うことが重要です

疑わないと、CTやMRIをとっても、気が付きません


⑤自殺しそうな頭痛を疑う:生命予後

三叉神経痛やTACsは、自殺さえ頭をよぎる痛みと言われています

まさか、そんなはずなかろうと思うかもしれませんが、

頭痛がひどすぎて、リストカットして救急受診された人もいました

そのため、三叉神経痛やTACsと思った場合、

あまりに痛みがひどそうな場合は、外来フォローとはせず、

入院にて治療をお勧めします



以上のステップを踏みつつ、下記のように考えます

①まずは目の周りの痛みなのか、目の痛みなのか

②そして、三叉神経領域の痛みなのかを診察します

三叉神経領域の痛みであれば、

③自律神経症状の有無をチェックします


自律神経症状がなければ、

典型的三叉神経痛か、

有痛性三叉神経ニューロパチー(つまり二次性三叉神経痛)を考えます


ポイントは、典型的三叉神経痛には、

①トリガーゾーンがあることが多い

②V1領域はまれ

という事です


なので、トリガーゾーンがなくて、

V1領域の三叉神経痛の場合、

典型的三叉神経痛から疑うのは、センスがありません

二次性から疑います


典型的三叉神経痛とは、

血管が三叉神経にあたって生じていると考えられるものです


二次性の最大の鑑別は、帯状疱疹です

特に皮疹のでないZoster sine herpateは鑑別が非常に困難です

疑ったら、髄液をとってVZVのPCRを出しつつ、

治療せざるを得ないかと思われます


三叉神経領域の帯状疱疹を疑った場合、

皮疹を探すと思いますが、

皮疹のピットフォールとして、

口腔内や鼻腔のチェックが漏れることがあります


また、三叉神経と頸神経は核のところで、交通があるため、

後頭神経領域に皮疹がでていることもあります

そのため、皮疹のない帯状疱疹という前に、

鼻腔や口腔内、後頭部もしっかり、皮疹をチェックしたか確認しましょう


自律神経症状、つまり流涙や鼻汁、充血、浮腫といった症状を伴う場合、

TACsを疑います

TACsの中には、

群発頭痛、SUNCT/SUNA、発作性片側頭痛、持続性片側頭痛といったものがありますが、


まずは群発頭痛の特徴をしっかりおさえることが重要です

なぜなら、TACsがとても稀な疾患であり、

出会うとしても、群発頭痛のことが多いからです


群発頭痛は、働き盛りの男性に多く、

お酒を飲んで、夜に起きることが多いです

片頭痛と違って、

暴れまわるくらいの痛みです

七転八倒するような痛みをみたら、TACsとRCVSを疑います


TACsの中での鑑別は、持続時間とインドメタシンの効き具合で分けられます

ポイントは患者さんと一緒に痛みの図を完成させることです

なかなか、痛がっている時は、病歴をとれないことが多いですが、

落ち着いたら、しっかり痛みの性状と持続時間を確認しましょう



TACsにもmimicというか、二次性があります

たくさんありすぎます

たくさんあるので、

検査・画像で分かるものと

分からないものに

分けると分かりやすいかもしれません


TACsを疑っても、

初発の場合や非典型的な症状の場合、治療抵抗性の場合は、

必ず二次性を否定します

つまり、造影MRIを撮影します

見るところは、海綿静脈洞やその周囲、眼窩、副鼻腔、下垂体、血管です


撮影方法に注意しないと、よく見えないことがあります

特にトロサハントはその目でみないと、絶対に分かりません


画像検査で分からないものの代表は、

GCAと帯状疱疹です





片側の目の周りを痛がる人をみたら
まとめ

・「視力予後」と「生命予後」の軸で考える


①眼科疾患の可能性を疑う:視力予後
②GCA(巨細胞性血管炎)の可能性を疑う:視力予後
③細菌感染症を疑う:生命予後
④下垂体疾患を疑う:生命予後、視力予後
⑤自殺しそうな頭痛を疑う:生命予後

実際の診察の順としては、

(1)目の周りの痛みなのか、目の痛みなのか確認
(2)三叉神経領域の痛みなのかを確認
(3)自律神経症状の有無を確認

その後、一次性と二次性を鑑別していく


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