主訴:のどが痛い
という主訴をみたら、まず患者さんのいう「のど」がどこかを把握します
「のど」が痛いと言っているのに、痛い場所を指さしてもらうと、
首の方を指さしたりすることもあります
次に、嚥下時痛があるかどうかを確認します
咽頭炎であれば、必ず嚥下時痛があるはずです
嚥下時痛がないのに、のどが痛いという時は、
急性心筋梗塞や頸動脈解離を疑いましょう
最後にのどのが痛いと言っており、嚥下時痛も強いのに、
のどに全然所見がない時は、喉頭蓋炎を疑います
→「のどに所見がない時の咽頭痛」参照
「のど」が痛いという主訴は、いきなり咽頭炎から考えてはならないのが、難しいところです
まず感染症以外の致死的な病気を考え、
次に感染症による致死的な病気を考えていきます
「のど」が痛いという場合に、感染症の三角形を書くときの条件として、
患者さんのいう「のど」が「咽頭」の場合であり、
嚥下時痛があって、咽頭(口蓋垂・扁桃・咽頭後壁・軟口蓋)に何らかの所見がある時に用います
急性咽頭炎~のどが痛いんです!~
(1)背景
バセドウ病でメルカゾール飲んでいる人は注意が必要です
無顆粒球症の可能性があります
暴露はもちろん重要です
小児との接触を聞きましょう
また意外に性交渉歴も重要です
淋菌やクラミジア、HSV、梅毒、HIVでも咽頭炎をおこすので、よくわからない咽頭炎をみたら、性交渉歴を確認するとよいでしょう
(2)部位
感染部位は咽頭ですが、咽頭といってもいろいろですよね
カルテによく、「咽頭発赤なし」とかきますが、
その場合、咽頭のどこにも特記すべき所見はなかったという意味合いです
逆に異常所見があった場合に、「咽頭発赤あり」とはかきません
なぜなら、咽頭のどこやねん!ってことになるからです
異常所見があった場合は、詳しく記載する必要があります
軟口蓋:溶連菌の時の日の出様発疹、風疹でみられるような点状出血、
ヘルペスの時の多発する小水疱やびらん、
扁桃周囲膿瘍の時は前口蓋弓が凸型、後口蓋弓が見えない
扁桃:腫大や白苔の有無、白苔ならべっとり(EBV)なのか、うっすらなのか
腫大の強さは気道狭窄を来すレベルなのか、軽度なのか
咽頭後壁:リンパ濾胞の腫大がインフルエンザの時のようないくら状態なのか
後鼻漏があるかどうか
口蓋垂:腫大・発赤あり
といった感じで、
咽頭のどの部分に、どんな異常があるか?を記載しましょう
「咽頭発赤あり」は何の情報にもなりません
とはいうものの・・・
咽頭の所見だけで、多くを語るのはかなりアートな感じで、熟練が必要です
なのでまずは、
咽頭炎の場合、咽頭以外の症状や所見を探すことが重要です
咽頭以外の+αの症状あり:鼻水、咳 → ウイルス感染っぽい
咽頭以外の+αの症状なし:咽頭痛のみ → 細菌感染っぽい
リンパ節腫脹の場所も重要です
前頸部に圧痛のあるリンパ節腫脹:細菌感染かも
後頚部にごりごり触れる:ウイルス感染(EBVやパルボ)
耳前リンパ節が腫大:風疹、パルボに特徴的
そして、咽頭炎の診療で何より大事なのは、killer sore throatと呼ばれる病気を見逃さないことです
咽頭は複雑な臓器で、parapharyngeal spaceを介して感染の場合、周囲に広がっていきます
→「死ぬ可能性のある咽頭痛」参照
開口障害のある咽頭痛、唾も飲めない咽頭痛、呼吸苦のある咽頭痛、やたら重症感のある咽頭痛には要注意です
(3)微生物
ウイルス性がほとんどです
ウイルス性で注意が必要なのは、EBVとHIVです
EBVの伝染性単核症はflu like symptomのプレゼンテーションで来ますが、
溶連菌感染と区別が難しい時はあります
EBVにアンピシリンを出すと、皮疹がでるのでしっかり区別したいところです
→「EBVとIMの皮疹」参照
細菌性はA群β溶連菌が多いですが、実はGBSやGCS、淋菌、クラミジア、嫌気(フゾ)、マイコプラズマetcといったように、多彩な細菌が咽頭炎を起こすことが知られています
ですがここでも副鼻腔炎と同じで、細菌感染=抗菌薬投与ではありません
GASを含めですが、自然軽快することが多いので、ウイルス性と同様に対応しても問題ありません
ですが、GASの場合、リウマチ熱の予防や膿瘍病態への進展予防、症状緩和に効果があるため、抗菌薬の適応となります
他の細菌感染に対して、抗菌薬を投与するかどうかは、各臨床医によって考えが異なります
急性咽頭炎の微生物のポイントは3つです
①いかにGASによる感染を見抜くか:センタークライテリア、迅速検査
②EBVらしさの見積もり:後頚部リンパ節腫脹、脾腫、血液検査で異型リンパ上昇
③HIVをどうピックアップするか:MSM、リスクのある性交渉歴
(4)治療
前述したとおり、GASによる咽頭炎にのみ抗菌薬の適応となります
もちろん、急性咽頭炎でなく、
killer sore throatの場合、その病気に応じて治療が必要です
咽頭痛の対処療法で頻用されるのは、桔梗湯です
(5)適切な経過観察
どんどん増悪する咽頭痛や高熱が持続する場合は、扁桃周囲膿瘍含め深頸部感染症を考慮しますので、再診してもらいます
まとめ
・「のど」が痛いという人をみたら
→そもそも「のど」がどこか?
嚥下時痛はあるのか?
咽頭に所見はあるのか?
・背景:暴露を聞く
・部位:咽頭のどこに異常があるのか、killer sore throatを見逃さない
・微生物:ウイルスがほとんどだが、EBVとHIVは忘れない
GAS感染をどうやって詰めるか
・治療:GASによる急性咽頭炎と診断したら、抗菌薬の適応
・適切な経過観察:膿瘍化してくる可能性があるので、咽頭痛がどんどん増悪したり、高熱が3日続くようなら再診を
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