めまいの女性が入院となりました
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申し送りを聞くと、
85歳女性 主訴:めまい
Profile:Afがあり、抗凝固薬内服中
DL、DMがあり、内服治療中
ADLフル
現病歴:夕方、めまいが出現
改善ないため、救急受診
受診時も浮動性めまいは持続していた
バイタルはいつもより血圧高値
身体所見では注視方向性眼振や垂直性眼振あり
めまいのため、歩行できず
他の診察は問題なし
救急担当医は眼振の性状から、中枢性を強く疑い、
頭部CTとMRI撮影
しかし、新規の出血や梗塞は認められず
MRAでは明らかな解離はみられず
そのまま入院となった
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①ディスカッション:めまいの鑑別
浮動性めまいがあり、垂直性の眼振がでている時点で、中脳を含めた
後方循環系の虚血が疑われる状況です
めまいの進め方として、中枢性と末梢性に鑑別が分かれます
HINTsPLUSも重要ですが、もっと大事なことは、
歩行できるかどうかと、もともとのvascular riskです
今回の症例は歩行できない時点で、入院が決定します
そして、年齢やvascular riskがたくさんある時点で中枢性がかなり疑われます
しかし、今回は最初のMRIで梗塞像がなかった
これをどう考えるかです
スライス幅の問題?、発症して間もないため?、それとも診断が違う?
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入院後診察してみると・・・
めまいは完全に消失していた
一晩ねたら、治ったとのこと
トイレにもすたすた歩いて行ける
眼振も消失
頸部痛なし
難聴なし
脳神経も小脳所見も何もない
普段通りであるとのこと
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②ディスカッション:何が起きているのか?
さて、何が起きたのでしょうか
改めて病歴を取り直してみると、めまいが出る前に豆電球を交換していたようです
6つくらい交換していたようで、30分くらいはしていました
上を向きながら、両手を上げて作業をずっとしていたようです
その途中で、くらくらして気分が悪くなり、横になって休んでいたが、
改善しないため、救急に娘さんに連れられて来られたようです
こういっためまいは以前もあり、枝木を剪定している際中に同様のめまいが出現したことがあるようです
こういった出たり、消えたりする症状をみたら、鑑別が絞れます
①代謝:高アンモニア血症、尿毒症、低血糖など
②血流不全
③薬
④暴露:CO中毒、有毒なガスなど
⑤機能・発作系疾患:片頭痛、てんかん発作、パニック発作など
ということで、今回は後方循環系の症状(めまい、中枢の眼振)がみられたため、
②虚血(血流不全)であることが一番疑われ、
完全に回復しているので、TIAが疑われます
ここで、大事なのはTIAで終わらせないことです
TIAの中でも椎骨脳底動脈血流不全(VBI)の場合は特別扱いしてください
椎骨脳底動脈血流不全(VBI)
なかなか証明が難しいので、ゴミ箱的な鑑別疾患になってしまうこともありますが、
確実に存在すると思います
VBIの場合は、普通のTIAと同様に考えてはいけません
普通のTIAの場合は、おなじみのABCD2スコアなどをつけて、
抗血小板療法を開始したり、Afのチェックを行います
あとは動脈硬化リスクがあれば、DLやDM、HTに対して介入を行います
VBIの場合もここまでは同じです
しかし、VBIの場合、血流不全に至った原因が、
前方循環系の場合とは異なる場合があります
なぜかというと、椎骨動脈が椎骨の横突起の中の横突孔を通っているため、周りの骨棘や椎間板、首の回旋運動や後屈の影響をもろに受けます
もともとPICA endで終わっていたり、低形成がある人、動脈硬化が進行した人の場合、
首の動きによっては、椎骨動脈の血流が途絶える人がいます
そのため、VBIの場合は、発症時の姿勢や体勢が原因のこともあるのです
そこを見逃してしまうと、どんなに薬をいれても、
また同じ姿勢をとってしまって、再発することになります
そして、椎骨動脈は解離をおこしやすいので、安易な抗血小板薬投与にて、
解離腔が拡大する恐れもありますので、解離にも注意が必要です
まとめ
・歩けないめまいは中枢性を疑う
→垂直性眼振は明らかに中枢性(特に中脳)を疑う
・TIAの中でもVBIは特別
→発症時の首の位置や手の位置が診断のkey
・VBIの場合、解離に注意
→ちょっと前に何か首に負担になるスポーツやマッサージをしなかったか聴取
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