症例サマリー
関節リウマチに対して、アクテムラ使用中のADLフルな70歳女性
前日まで元気であり、本日、ショックバイタルで集中治療が必要な状態
エントリー不明の菌血症がありそうで、感染性動脈炎を合併している
敗血症性ショックに準じて、輸液やNAで全身管理
ドレナージポイントがないため、エンピリックに抗生剤を投与している
そんな状況で・・・
細菌検査室「血培陽性の報告です。
〇〇さんの〇月×日の血液培養、2/2セットでGPC が陽性になりました。」
ということで、やはりGPCが検出されました
次に聞くことはなんでしょうか?
GPC が検出された場合、clusterかchainかどうかを聞きます
T「 clusterですか?chainですか?」
細「chainです」
Chainだった場合に次に聞くことは、溶血の有無です
T「溶血していますか?」
細「溶血しています」
ということで、GPC chainで溶血している細菌まで絞られました
となると、鑑別は
・侵襲性肺炎球菌感染症(脾機能不全者で特に)
・劇症型連鎖球菌感染症(GAS、GBS、GGSなどの全てのβ溶連菌)
上記のどちらかに絞られました
肺炎球菌ワクチンを接種ずみであること、脾臓は普通サイズであったことから、
劇症型連鎖球菌感染症を疑いました
となると、起因菌はGAS か non - GASです
近年、GGSが高齢者の菌血症の重要な病原菌である報告例が多数みられます
日本でもGGS菌血症はコモンな菌血症になりつつあります
そのため、GGSの菌血症に出会ったことがある医師は、
蜂窩織炎で血液培養とったら生えてくる菌
高齢者のfocus不明な発熱で生えてくる菌
抗生剤がなんでも効くので、治療がしやすい菌
というイメージがあるのではないでしょうか
しかし、時にGGSはGASと同じような振る舞いをすることがあります
今回の症例は結局、S.dysgalactiaeでした
治療は順調でICUも出ることができました
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連鎖球菌について
連鎖球菌は身近な菌でありながら、実は非常にわかりにくいです
その理由は
・分類がわかりにくい
・種類が多い
・名前がコロコロ変わる
・1つの菌が多くの病態や感染を起こす(その後の免疫病態も)
が挙げられます
細かい菌名は後で良いので、まずは大きな分類から頭に入れておきましょう
①溶血の有無
②Lancefield分類
この二つが重要です
検体採取から陽性までの時間 一般にこの時間が短いほど真の菌血症である可能性は高いBacT/Alert systemを用いた血液培養では肺炎球菌による重症感染症の多くは10~15時間で陽性になることが報告されている
JJAAM. 2011; 22: 330-6
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