先日の症例は中年男性の筋痛と不明熱の症例でした
外来での不明熱のマネージメントは非常に悩ましく難しいです
初期研修医から専攻医になると、「外来」を学び始めます
外来の時間の使い方を学ぶことが専攻医の一つの目標になります
その上で今回の症例は時間の使い方が非常に悩ましい症例でした
今回は不明熱に関するパールや考え方がたくさん出てきて、楽しくディスカッションできました
佐藤泰吾先生の不明熱(感染症ver.)
①血管内感染症:IE、細菌性動脈炎
②胸腹部骨盤造影CTで見逃す膿瘍:耳鼻科領域、骨、皮膚、筋
③細胞内寄生:ウイルス、結核、血液培養陰性系
④特殊な状況を勘案すべき疾患:旅行、動物、環境
すぐに使えるリウマチ・膠原病診療マニュアル改訂版 岸本暢将/編
6.不明熱診療における感染症の考え方【佐藤泰吾】
不明熱のemergency
致死的な病態:弁破壊、PE、腹腔動脈瘤破裂、不整脈、血球貪食症候群
機能障害が残る病態:神経、失明
感染対策上重要:TB、HIV
外来不明熱のbig3
IE、亜急性甲状腺炎、CMV
などなど不明熱の切り口が色々ありましたね
今回の症例もまずは感染症として対応してみることが大事です
発熱診療のスタートは感染症から軸をずらさないことが重要になります
まずは感染症として精査を行いつつ、時間を使ってみたものの、
やはり感染症の経過ではないことを確認します
次のステップとして、腫瘍か膠原病にいくわけですが、
今回は筋痛があったので血管炎を強く疑うことができました
小血管炎を示唆する所見は何もなかったですが、
途中で痺れが出てきたので小血管炎か中血管炎に鑑別が絞ることができました
小血管炎はANCAが関連するAAVとそれ以外で考え、血液で出せるものは出します
血液のサロゲードマーカーがない場合は、生検に頼らないといけない時もあります
今回は大血管炎も鑑別でしたが、PETで可能性は下がりました
GCAにしては若く、高安にしては高齢であり、
今回の症例は大血管炎がmost likelyとは思っていませんでした
これくらいの中年男性の血管炎といえばPAN(結節性多発動脈炎)です
以前、膝の後が痛いという主訴できて、
膝窩動脈の血管炎からの動脈瘤ができていたというPN症例もありました
筋痛や痺れはよくきたすので、今回の症例はPNをmost likelyに考えました
PNは診断が遅れると、鶏歩になってしまったり、
中血管の動脈瘤が破裂してショックで帰ってきたり、
機能予後と生命予後を悪くする疾患なので、疑った場合は悠長にしてはいられません
ただし「PNはリウマチ科医にとっての結核」と言われるように、診断も除外も難しい病気です
PNは人にお願いしないと診断できないので、自分たちでできることは全て行ってお膳立てしておくのも重要です
あとはこれしかないんです!と処置する人にアピールして快く処置してもらう処世術も必要になってきます
血管造影(腹腔内と痛いところ:今回なら下肢)と生検(神経、筋、痛いところ)が診断には重要になります
結局、不明熱はどこを生検するか?に落ち着いてくることがほとんどです
どこを取るか?のために、診察を行い、USや造影CT、PETを行い、
取る場所を探しているイメージです
考え方としては、病気ごとに取る部分がある程度決まっています
GCAなら側頭動脈、EGPAなら鼻粘膜、MPAなら腎生検、PNなら神経や筋生検
そして症状や所見があるところから取ります
今回の症例はPNが疑われ神経・筋生検が行われました
神経と筋肉は一緒に取ることが多いです
高齢者はあまり痛がりませんが、若年者は強い痛みがでます
生検の結果はなんと好酸球浸潤があり、EGPAを示唆する所見でした
PNなのか、EGPAなのか、最後は悩ましくなってしまいましたが、小から中血管炎であることは間違いなさそうでした
---------------------------------------------------------------------------------------------------
志水太郎先生のパール
「その患者さんの人生史に似つかわしくない主訴できた時は、toxinとvascularを考える」
今回の症例も、この患者さんには合わない筋痛や痺れであり、血管病変を示唆するものでした
まとめ
・原因不明の急性発熱をみたら、まずは感染症から軸をぶらさない
→リケッチア、レプトスピラ、レジオネラ、マイコプラズマなど血液培養で引っかからない感染症に注意
・中年男性の不明熱は、中血管炎(PN)を疑う
→リウマチ科医にとっては、結核的な存在であり、診断が難しい
・その患者さんの人生史に似つかわしくない主訴できた時は、toxinとvascularを考える
0 件のコメント:
コメントを投稿