病歴聴取から以下のような鑑別が考えられ、取りたい所見は以下のようにました
鑑別疾患にも優先順位はありますが、診察にも優先順位をつけることが大事です
外来は「時間圧」があります
悠長に神経診察できないことが多いです
ポイントは鑑別疾患が大きく変わる診察は何かを意識することです
例えば、咽頭痛であれば、咽頭に所見があるかどうかは最重要です
次に大事なのは開口障害です
失神であれば、シェロング試験はmustです
今回の両下肢の痺れや脱力であれば、腱反射が亢進していれば、
脊髄病変を疑いますので重要です
またミエロパチー vs ニューロパチーの構図になっているので、
その場合、lineが引ける感覚異常があるかどうかは非常に重要になります
この所見だけは時間をかけてでもとる必要があります
神経疾患全般に言えることですが、
神経診察でわかるのは、異常となっている解剖学的な部位です
たまに一般診察を疎かにしている人がいますが、一般診察も重要です
一般診察で分かるのは、病因・病態です
例えば脳梗塞であれば、
頸動脈雑音、心雑音、両側上肢の血圧の差、塞栓徴候、皮疹(顔面の帯状疱疹)などで、解離や頸動脈狭窄、IEが判明する場合があります
今回であれば、M蛋白によるニューロパチー、POEMSが鑑別です
そうなると、浮腫や皮疹・多毛がないか?という目で診察が必要になります
血管炎やサルコイドーシスも鑑別であり、皮疹や結節がないかも重要です
神経診察と一般診察をごちゃごちゃにとるのではなく、
切り離して考えます
神経学的異常部位をみつけようとしているのか?
病態を探ろうとしているのか?
と頭が整理されます
今回の神経診察では、
剣状突起の下に感覚鈍麻がありました
この所見は非常に重要で、ミエロパチーを示唆する所見です
この時点でポリニューロパチー vs ミエロパチーは、
ミエロパチーに軍配があがります
次はミエロパチーの鑑別に入ります
さて、この症例はMRI を再検されていますが、胸髄に明らかな病変はありませんでした
頸椎はやや狭窄がありましたが、脊髄内に高信号はなく、
頸椎症性脊髄症の診断も微妙でした
しかし、患者さんの症状は悪化の一途をたどり、
画像では明らかではないものの、髄液検査で蛋白上昇や診察の所見から
何らかの脊髄炎があるものとして、ステロイドパルスの治療に踏み切られました
パルス後は症状は軽快傾向であるとのことでした
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脊髄病変を疑った時は、上司がまとめてくれたこの分類を思い出します
今回の症例の結論は出ていません
ただステロイドが効く病態であるということで、鑑別が多少絞られました
その中で、除外できているもの、除外できていないものを丁寧に区別し、
今後、経過観察していくことが重要になります
診断も治療も非常に難しい症例でした
まとめ
・鑑別疾患だけではなく、身体所見にも優先順位をつけよう
→時間がなくても、絶対にやらなければならない診察がある
・神経疾患を疑った時は、神経診察と一般診察を分けて考える
→神経診察では神経の解剖学的異常部位を探すことができる。つまりどこの画像をとるべきか?が分かる
一般診察では、その原因となった病態のヒントがあることがある
・ミエロパチーを疑った場合の進め方
→圧迫病変ないか、炎症はないか、脱髄はないか?
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