2019年7月11日木曜日

教育回診

本日から当院では教育回診が始まりました

出席できなかった人達のために、自分が勉強になったと思うことを中心に

自分の解釈を踏まえながら、書いていきます

なので、教育回診で来てくれた先生が、

下記をすべて言っていたわけではないので、ご了承ください




今日の教育回診で、勉強になったと思う反面、とても反省しました


自分は「病歴大事!」といつも思っていたのに、

「病歴大事!」の熱が少し冷めてしまっていたことに気が付きました


最近、診断がついていない症例が多いなあと思っていたところ、


「診断に困っている症例の多くは、病歴が足りないからです」


という言葉に、ハッとしました

その通りだなあと思いました




ということで、上手に病歴をとるためのチップスを紹介します


①病歴は主観的な表現なので、

    客観性を持たせる為に、

     話された内容の事実関係を確認する作業を行います



openで聞いて、それ本当?

と思ったら、closedで確かめにいくことが重要です

全てを鵜呑みにしてはいけない時もあります


よくあるのは、

「もう3日前から何も食べていません」

という人が来て、本当に3日前から飲まず食わずだったら、

尿量は減るはずですよね

なので

「尿は出ていますか?」

と聞いて、


「ほとんど出ていないですね」

であれば、本物かなと思います

「普通に出ています」となれば、

何か水とか飲んでいるんじゃないかな、と思います


嘘ではありませんが、つらい時は症状を誇張して表現してしまう人もいます



なので、あくまで病歴は主観的ではありますが、

工夫次第で、客観性を持たせることができます




病歴を上手に語れない場合や気が付いてない場合、

聞き方を変えると、ひっかけることができます


それは、生活動作にそって、聴取するというやり方です


生きていれば、必ず行うであろう動作に交えて、

病歴を確認していくと、

いろいろ症状が見えてきます


例えば、一日中動けない

という主訴で来て、

麻痺があって動けないのかもしれませんよね


そこで、

「麻痺はありましたか?」

と聞いても、家族は患者さんに対して、

バレー徴候などしてくれることもないので、

麻痺?と言われてもよくわかりません



なので、

「一日中動けないということでしたが、

トイレはどうやって行っていたんですか?」


と聞くと、右足を引きずりながら歩いていました

とか言ってくれることもあります


手の麻痺を見ぬく場合は、

食事の時の手の使い方はどうでしたか?

左手でご飯持っていましたか?

といった感じです


医師が投げかけた質問に対して、

ある瞬間をイメージできるような質問はいい質問です


どのタイミングかイメージできないと、

「(よくわからないけど)ありません」

という返事になってしまいます


麻痺があったかどうか?という質問は、

どの瞬間の記憶を取り出していいか、聞かれた側は困ってしまいます

なので、即答できません



研修医の先生と上級医の先生で、

質問の答えが違うのは、質問の質が違うからというのも理由の一つかと思います


もちろん、何度も話していると思いだしてくることもあるので、

理由はたくさんありますが、


病歴聴取が上手な先生の問診は、答えやすい質問になっています




こつはROS的に症状を一つずつ聞いていくのではなく、

生活動作を交えて聞くことです



病歴はあくまで、患者さんが体験した疾患の症状を、

患者さんの感情や解釈を通して、発せられた言葉でできた物語です




なので、何度もきくと、ちょっとずつ違っていたり、

診断には直結しないような情報もたくさんあります



しかし、それは仕方のないことです


患者さんが、国試の問題文のような病歴を語ることはまずありません


ただし、医療従事者が病気になると、病歴を国試の問題文的に話す傾向があります

それは、医師に協力して、病気を診断しやすくしているためです



しかしそうすると、ノイズキャンセラーのように、

自分で勝手にこれは、関係ないから言わないでいいであろう

と話してくれない内容もでてきます

これは別に医療従事者でなくても、誰でもそうしています



そうなると、隠された情報があることになります

病歴聴取には常にそういった側面があります

詳しくは、このブログでも挙げた「病歴聴取」というところに書いてありますが、


病歴聴取で重要なのは、

何を話したか?

ではなく

何を話していないか?

そして、ノイズは何か?


です



国試のきれいな病歴から病気を当てる作業は簡単です

それよりも、その病歴をきれいにとるということが、

いかに難しいかを、医者になると気づかされます



学生の間に、患者さんの物語から、国試の問題文のような文章を作成する

という練習をたくさんすれば、病歴聴取はうまくなると思います





腹痛における病歴と身体所見のギャップ

たまに病歴では、訴えなかったのに、

身体所見をとると、腹部の圧痛がある人がいます


これは、自覚症状と身体所見のどちらを信じればよいのでしょうか



意識がしっかりしている人と

意識状態が悪い、もしくは、

認知症や脳梗塞で自分の訴えを正確に言えない人で分けます



前者の場合、問題ないことが多いです

後者の場合、問題があることが多いです


エビデンスは不明ですが、実臨床でもそう感じます



SOAPにおけるOとA


これはありがちなのですが、

OのプレゼンテーションでAを言ってしまうことです


Oはあくまで客観的な事実を自分の解釈なく、

伝えることです



よくあるのは、眼球結膜に貧血があります   →  蒼白
  
レントゲンで肺炎があります     →  浸潤影
 
体幹に帯状疱疹があります      →  周囲に紅斑を伴う水疱が帯状に集簇



といった具合です


気持ちは分かりますし、自然にそう口走ってしまうことも自分もあります

が、本当はあまりよくないことです


なぜなら、プレゼンを受ける側の思考を狭くしてしまい、

誘導しているからです

一度、誘導を受けると、そこから離れるのは容易ではありません


なので、相手に真剣に悩んでもらいたいのであれば、

OとAは区別すべきです


OでAが出てくると、

間違った方向に進んでいってしまった時に、

どこで間違えたかが分からなくなることもあります


結節性紅斑として鑑別を進めていたが、

実は結節性紅斑じゃなかった

とかです


患者さんからとった所見を誰かがプレゼンしている時点で、

一次情報が二次情報になり、

さらにアセスメントが加わることで、

三次情報になっていきます


情報伝達のエラーはどんどん起こりやすくなります



なので、分からない時は、一次情報にアプローチしましょう


病歴聴取のコツ
・主観的な病歴に客観性を持たせる
→openとclosedを上手に使う


・生活動作にあわせて、病歴をとる
→生活にそった動作なら、記憶を思い出しやすい

・病歴は患者さんが体験した物語
→医師の問診で、新たな物語が生まれる

1 件のコメント:

  1. いつまで普段通りだったか、を具体的に聞くと、とても遡って時間がかかることがありますが、とても大事に思います。

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