当院では、整形外科とコラボしており、
大腿骨頸部・転子部骨折の患者さんは、
自動的に内科医も併診するシステムになっています
ご高齢でポリファーマシーで、multimorbidityな方が多いので、
内科医が関わることは、むしろ当然に思います
先日、整形の先生からコンサルトがありました
80歳の女性の方の頸椎骨折(不安定)で、手術を数時間後に控えた人が、
朝から頭痛を訴えていて、嘔吐やめまいがあるとのことで、
診察してほしいという依頼でした
病歴を聞いてみると、もともと元気だった人が、
眠れないので睡眠薬をいつもより多めに飲んだら、
足元がふらついて、
転倒し、首を過屈曲して受傷したそうです
その後、頸部痛があり、救急車で来院されました
四肢の麻痺や感覚障害もありませんでしたが、
CTにて多発頸椎骨折や靭帯損傷があり、
MRIでは幸い、脊髄病変はありませんでした
骨折が前方・後方に及んでおり、不安定な状態のため、
準緊急で手術が予定されていました
あと一時間後に入室です
という状況で呼ばれました
診察しにいくと、
やたら頭痛を訴えていて、
ややパニック状で、うまく問診や診察ができませんでした
とりあえず四肢は動いており、
呂律も回っていそうでした
右上肢だけ、動きが鈍く、
本人は痛いからという解釈でした
脳神経学的所見は協力が微妙であり、
眼振がないこと、顔面の触覚に左右差はないこと、
呂律不良がないこと、顔面の非対称性はないことを確認しました
めまいは今はおさまっているようです
受傷が2日前だったので、前日はそういった症状はなく、
day3から新規に頭痛やめまいが出現したそうです
この状況で、コンサルトをうけたらどうしましょうか?
一時間後に入室が予定されている患者さんです
自分の診察で、手術を延期すべきか、
そのまま手術にいってもよいものか・・・
困ったと思いながら、
待てよ、これはもしや、あの病気では・・・・
ということで、頭部CTにいきました
CTでは、右小脳にうっすらLowなareaが新規に出現していました
出血はありませんでした
もう、こうなったら手術は延期させるしかないと思い、
MRIまでとりました
すると、やはり同部位に新規の脳梗塞が出現していました
これは、有名な外傷に伴って発症した椎骨動脈解離ではないか!
ということで、脳外科Drと相談し、治療方針を組み立てたという流れです
救急の時点では、造影CTはなかったので、評価ができていませんでした
ですが、頸椎損傷がある時は、整形外科コールしたり、
神経診察を丁寧にとったり、
バイタルを保ったり、
他の外傷がないかをチェックしたり、
現場は大変忙しく、やることが多いのです
なので、とても稀な椎骨動脈損傷まで、頭が回らないのは、
よくよくあることです
ですが、稀と思っているのは、そもそも見逃しているのではないか?
ということになり、スクリーニングの重要性が叫ばれています
脊髄損傷があると、神経学的な異常がみられるため、
脳梗塞があっても、マスクされやすいのが、実情です
その状態で、整形外科で手術が行われると、
術後に違う症状が出現してきて、
家族に手術のせいだ!
と言われかねませんので、
術前に椎骨動脈の評価をしておくことが重要です
スクリーニングでひっかかれば、脳外科コールです
頸椎骨折は整形外科
全身管理は、ICUや救急Drで管理します
椎骨動脈解離があれば、脳外科
特に、血管内治療ができる脳外科Drをチームに加えることが
とても重要になります
みんなでチームを作って、治療戦略を立てることが重要です
スクリーニング
①症状と所見
②リスクファクター
をチェックします
どれか引っかかれば、CTAを行い、椎骨動脈の評価を行います
スクリーニングの方法は確立したものがなく、
たくさんの方法が提唱されていますが、
よく使われるのが、修正Dnnver criteriaです
どれも似たようなことを言っています
CTにて頭蓋底骨折や顔面骨折、椎体骨折があれば、
リスクはかなり高い状態です
無症状の時期に見つけて、早期に対応すれば、
脳梗塞を予防できるといわれているので、
早期発見が重要です
鈍的脳血管障害 スクリーニング編まとめ
・高齢者の場合、地面に転倒したくらいの外傷でも起こる
・見落としが非常に多い、
見逃すと脳梗塞が致命的になることがある
→スクリーニングを行い、見落としを防ぐ
・スクリーニングは、症状・所見・画像で行う
→引っかかれば、CTAと脳外科コール
参考文献:Uptodate
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