医学的なことはもちろんですが、医学以外のこともあります
一番はコミュニケーションのスキルだと思います
特に面談のスキルです
自分はインフォームドコンセント(IC)という言葉は好きではないので使いません
ICは「説明と同意」と訳されますが、患者さんは「同意」する必要はないからです
ムンテラはドイツ語のムントテラピーが語源で、「口で治す」というのが、
「言いくるめられる」というような意味合いに捉えられてしまっていて、
もはや死語になってきました
なので、自分は患者さんと話す時は「面談」と呼んでいます
----------------------------------------------------------------------------------------------
研修医の先生が、めまいの精査加療目的に入院した患者さんと家族に面談を行いました
これに忠実に沿って、研修医の先生は面談をしてくれました
まず、患者さんの思いや家族からみた患者さんの状態を聞き、
その後、今回の病状や検査結果を説明していました
説明は紙に絵をまじえながら丁寧に説明していましたが、
途中、画像を出すのがごたついてしまいました
一通りの区切りで、家族の方にも視線をむけて、
質問はありませんか?
と促しており、ご家族の方も自由に質問ができる雰囲気でしたが、
家族の中には高齢の奥さんもいて、奥さんはずっと黙って聞いておられました
ご家族の質問にも丁寧に答えていましたが、若干、質問と答えが一致していない
という印象は受けました
(ちなみに家族は質問した内容と答えが一致していなくても、
「わかりました」と答えてしまいます。
流石に「それは質問の答えにはなっていません」とは言えませんから)
最後に退院後の生活指導も話し、和やかに終了となりました
---------------------------------------------------------------------------------------
面談の振り返りです
T「どうだった?」
Y「いやあ、全然ダメでした」
T「そう?とっても上手だったし、
質問にもほとんど答えることができていたし、よくやれていたと思うよ。
ちなみに、今の面談、自分では何点くらい?」
Y「50点くらいですかね」
T「そんな低い?笑
80点以上はあったと思うよ。まあ、100点の面談がどんな面談かわからないけど。笑
じゃあ、100点になるように振り返ろうか。
強いていうなら、どの辺がもう少し改善できたかな?」
Y「え・・・そうですね。
うーん、画像をもっと最初から準備しておけばよかったと思いました。」
T「そうだね。
3つアドバイスがあるんだけど、その中の一つは準備だね。
ファシリテーションって知ってる?」
Y「ファシリテーションですか。
聞いたことはあります。」
T「ファシリって医者になるといろんな場面で使うんだ。
今の面談もそうだけど、他職種で行うカンファレンスとか、会議とかでも使うね。
つまり、話し合いが行われれば、ファシリが必要になるんだ。
話し合いにはいろいろなパターンがあって、主に2つに分かれる
今回みたいに、報告や承認のパターンだと、3つのプロセスになる
情報共有→質疑応答→決定(病状説明→質問→退院決定)
このパターンは比較的簡単だから、ファシリもいらないくらい。
もう一つのパターンは問題解決のパターン。
さあ、みんな集まってこの問題を議論しよう!みたいな時だね
この時は4つのプロセスになる
共有→発散→収束→決定 です
このパターンは、そのままだと議論がまとまらないことが多いので、ファシリの力が必要です。
4つのプロセスといいつつ、実は5つ目のプロセスがあって、
最初に準備というプロセスがあるんだ。
この準備がとても大事で、ファシリがうまくいくかどうかは、準備にかかっている。
場のデザインスキルともかぶるんだけど、
今回の面談でいうと、椅子のセッティングや誰がどこに座るか、誰を呼ぶかとか。
患者さんを画像に近い位置に座ってもらったり、
ご家族さんに自分がお尻をむけないように注意したりする必要があったね。
ご家族さんに自分がお尻をむけないように注意したりする必要があったね。
画像も事前に準備しておけば、スムーズだったね。
話す内容も事前にカルテに書いておけば、頭の中が整理される。
結局、全ては準備なんだ。
というのが、1つ目のアドバイス。」
Y「確かに。。。。
先生がせっかく、MRIのDWIの画像出してくれていたのに、
それを僕が変えてしまって、結局探しまくった挙句、またDWIの画像を出すっていうことをしてしまいました。」
T「そうだね、笑。
人が準備しても意味がないからね。自分でしておこう。
では二つめのアドバイス。
それは、参加した全員に発言してもらうこと。
今回、発言していない人がいるよね。」
Y「ああ、、、奥さんです。」
T「そう。奥さんは実は耳が遠いかもしれないし、話が難しくてついて来れなかったのかもしれない。
いずれにせよ、奥さんは一言も話さなかった。
せっかく面談にきてくれているのだから、奥さんに話をふってもよかったね。
面談は一方的に医学用語を並べて、話をすればいいものではない。
それはただのムンテラ。
面談の姿勢としては話しながら、聴く姿勢でいるんだ
そのために、話ながらみんなついて来れているかを確認するのが大事。
マラソンの先導する白バイみたいに、誰も脱落することなく話を進めるのが重要なんだ。
そこでだ。
みんなに話し合いに参加してもらうコツがあるんだ。
なんだと思う?」
Y「えーー。。。コツですか?
わかりません。」
T「それは、
この現状で一番立場の弱い人は誰かを常に意識することだよ。
この考え方はどんな場面でも意識しておいた方がいい
例えば電車の中では、妊婦さんや小さな子供をみている親は実はとても立場が弱い。
コロナ騒動でも、一番立場の弱い人は誰だろうって考えると、
その人たちを助けることができれば、ほとんど全ての人を助けることができる。
今回の面談では明らかに高齢の奥さんだったね。
だから奥さんにむけて話すイメージで、話すのがいいんだ。
奥さんでもわかる声のスピードと大きさが求められていたんだよ。」
Y「なるほど・・・」
T「最後のアドバイスは、致し方ない部分もあるんだけど、
緊張すると早口になってしまうよね。
これを克服するのはどうしたらいいと思う?」
Y「練習ですかね。自分で自分の声を聞いてみたり、人前で一度話てみたりすることでしょうか。」
T「そうだね、それも大事。
もう一つはね。自信だと思うんだ。
この患者さんの病態について深く考えて、
自分の中で納得できる物語が生まれた時に、患者さんに自信を持って話ができる。
めまいだからとりあえず、中枢性が怖いので脳梗塞の検索のために
MRIを撮りましたが、脳梗塞はありませんでしたので、大丈夫だと思います。
っていうのと、
めまいの原因には大きく二つあって、脳からくるものと耳からくるものがあります
今回はお風呂に入った後に立ち上がって、その後、めまいが起きています
めまいの後に横になって、数分間で治っています
耳からくるめまいの場合、数分間で治ることは考えにくく、
どちらかというと一時的に脳への血流が途絶えて、めまいが起こった可能性があります
なんらかの理由で脳への血流が低下してしまい、それが完全に途絶えてしまうと脳梗塞になります
今回は幸い脳梗塞はみられませんでしたが、一過性の脳への血流が落ちてでた症状だったことが推測されます・・・
というようなかんじだね。
検査結果や病名を伝えることはもちろん大事なんだけど、
患者さんの起こった症状を病態生理まで理解して、
その思考のプロセスを共有してもらうのが、家族としても納得がしやすいと思うよ
だから自信を持って話すためには、患者さんにおきた病態生理を深く理解しておく必要がある。
もちろん、病気や治療の知識も必要だからめっちゃ調べる。
自分が知らないことを突っ込まれたらどうしよう・・・・
と潜在的に思っているから、質問がくると焦るし、
適当に自分の中で答えられる答えとして、質問に答えてしまうんだ。
病態生理や知識があやふやだと、焦った話し方や丸めんでしまうような話し方になってしまうんだ。」
Y「確かに。。。」
T「でもこれは強いていうならのアドバイスだから、今ので十分、平均以上のいい面談なんだよ。
ただ、より高みの面談を目指すなら、この3つを意識してみて。」
Y「はい、わかりました。ありがとうございます。」
T「面談ってめっちゃ勉強になるでしょ?
医者になって、一番勉強になったなあと思える時は面談だと思うよ。
こんな大事なこと、なんで学生時代に教えてくれないんだろうね。」
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------
まとめ
・面談で最も重要なのは、準備である
→場所、人、時間、内容を事前に考えておく
・面談ではみんなに発言をしてもらう
→誰がこの中で立場が弱いかを考える
・焦らず話すためには、練習も必要
→もっと大事なのは、自信を持つこと
患者さんに起こった病態、病気の知識、
治療内容、全ての知識があれば焦ることはない
0 件のコメント:
コメントを投稿