93回目の東京GIMカンファレンスに参加させていただきました
前半はシステム2で解剖や病態生理を考えますが、それらが全て除外され、
後半はシステム1で一発診断という、とても勉強になる症例でした
普段からあまり注意していなかったですし、
見逃している気がしてきましたので、改めて復習しようと思います
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68歳 男性 主訴:呼吸困難
(※症例は一部、修正・加筆を加えてあります。
発表者やコメンテーターの先生の許可もいただいております。
当日は緊張して発言できなかった追加コメントものせております。)
Profile:潰瘍性大腸炎に対してサラソスルファピリジンを長年内服中
現病歴:来院の1年前から労作時の呼吸苦を自覚
半年前から安静時の呼吸苦や動悸が出現してきた
新型コロナウイルス感染が不安であり、
自分でSPO2モニターを購入し測定していた
安静時はSPO2 90%、労作時は80%台に低下、就寝時は60%まで低下することもあった
複数の医療機関で精査が行われたが、原因は不明であった
その後も症状の改善がみられないため、受診
既存症:潰瘍性大腸炎
内服:サラソスルファピリジン
アレルギー:なし
生活:喫煙never、アルコールなし、仕事は会社員
バイタル 血圧140/70、脈 80、SPO2 92%(室内気)、呼吸数 16回/分
見た目 しんどそうだが、呼吸様式は浅くも深くもなし
身体所見 眼球結膜 蒼白なし
頸静脈 怒張なし
呼吸音 左右差なく清 心雑音 なし
腹部 特記すべき所見なし
下肢 浮腫なし
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ディスカッション①追加でとりたい病歴や身体所見、検査は?
N「まあ、この状態だと色々な病気がありますよね。
もちろん、肺の器質的な疾患や血栓などもあり得ます。
でも、SPO2 60%まで下がるのって相当ですね。
ここまでの経過だとシャント性疾患があるのかなと思いました。」
K「これまでの医療機関で診断がされていないということは、
単純な病気ではないんだろうなとは思います。
原因不明の呼吸苦や動悸で酸素化が下がっていなければ、
精神的な要因でしたね、ということは普段からよく経験します。
ですが、今回は酸素化が下がっているので、
何かしらの身体的な病気があるのだと思います。
おそらく一般的な検査ではわからない病気なのだと思いますが、
まずは一般的な疾患を検索していくのは大事だと思います。
例えば、COPDの変化がないかを身体所見で簡単にとりたいですね。
胸鎖乳突筋の肥大や気管短縮、胸郭の変形、口すぼめ呼吸などはすぐにとれるので、チェックしたいです。
あとは、志水太郎先生が
息切れは、肺か心臓か貧血に問題があると仰っていましたね。
今回は息切れと言っていいかはわかりませんが・・・
まあ、貧血でSPO2 は低下しないと思うので、この段階では肺か心臓の問題を考えたいですね。」
T「酸素化が低下する原因として、
肺胞低換気、拡散障害、換気血流不均衡、シャントという病態がありますが、
ここで前医での検査で診断がついていないということは、
CTは異常なかったということだと思います。
そうすると、
CTが正常で原因がはっきりしない低酸素血症というジャンルに落とし込めると思います。
参考:低酸素なのにCTがきれい
単純CTが正常ということは、
COPDや心不全、間質性肺炎といった拡散障害の可能性は低くなり、
肺胞低換気、換気血流不均衡の病態、シャント疾患の可能性を考えます。
まずは肺胞低換気、つまりAaDO2が開大しないタイプ、
CO2が蓄積するような二型呼吸不全をきたしていないかが気になります。
例えば、ALSの人は夜間に低酸素になって頭痛をきたしたり、
不眠になることがあります。
今回の症例では夜間の低酸素が目立つので、
SASのこともあるので、睡眠状況は確認したいです。
あとは全身の筋力低下や体重減少がないかを確認したいです。
血液ガスをとってAaDO2の開大かあれば、シャントや換気血流不均衡の病態を考慮するので、
造影CTにて血管系の問題(肺塞栓、シャントなど)がないかどうかを考えます。
シャントや肺静脈血栓症はその目で疑ってみないと見逃すことが多いです。」
N「シャント疾患って本当に難しいんですよ。
割と見逃されていることがあって。」
H「シャント性疾患だとplatypneaがあるかは気になりますね。」
参考:Cathet Cardiovasc Interv 1999; 47: 64-6.
仰臥位になると呼吸困難が増強するため、起坐で呼吸 している状態を起坐呼吸(orthopnea) と呼び、
逆に立位や坐位では呼吸困難が増強するため仰臥位で呼吸している状態を扁平呼吸(platypnea)といいます
扁平呼吸(platypnea)は立位にて動脈の酸素飽和度が低下するorthodeoxia ために起こると考えられており、platypnea-orthodeoxia syndrome(POS)と呼ばれます
さらに、POSはCardiac POSとnon cardiac POSに分類されます
・Cardiac POSは解剖学的な心内シャント(PFO、ASD)に加え、体位変換で右左シャントを増強させるような機能的異常があることが多い
・non cardiac POSは解剖学的な肺内シャント(肺動静脈奇形、換気血流不均等)に加え、体位変換でシャントを増強させるような機能的異常があることが多い
Cardiology 2012;123:15-23
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前半の感想
1stインプレッションは、肺高血圧か、右左シャント疾患?
労作時の呼吸苦のプレゼンテーションは肺高血圧っぽいが、
安静時でも酸素化の悪化が目立つのが、違和感がある
一応、膠原病(特に強皮症やMCTD)らしさがないかはチェック
心内のシャント疾患であれば、心雑音があって欲しいが、ないのでこれも可能性は下がる
あるとすれば、肺内シャントか
造影CTが見たい
造影CTで見逃す可能性があるとすれば、
慢性肺動脈血栓塞栓症や肺静脈血栓症、PTTM、IVLのような肺の血管が閉塞するような病態はあってもよいかもしれないが、
PTTMやIVLだったら途中の検索で悪性腫瘍が見つかっているか、途中で亡くなっているであろう
心不全は労作時の呼吸苦を呈するcommonであり、一番最初に想起するが、
診断できない病態ではない
心不全の中では、収縮性心膜炎からの右心不全は見つけにくい疾患なので考慮するが、
あまりに心不全兆候がないので、違いそう
ただ、体重変化がないかは気になる
夜間の低酸素が目立ち、二型呼吸不全を低する疾患群も疑わしいが、
呼吸数が少なく、呼吸様式が浅くないので、これも違和感が残る
日内変動や眼瞼下垂、enhanced ptosisがあれば、MGをググッと疑う
体重減少があれば、バセドウ病やALSを積極的に疑うであろう
UCGと血ガスで進む方向が変わってくる
二型呼吸不全側で行くか、肺の血管のトラブル側を詰めに行くか
だが、あまり病態的にバチッとハマるものがない・・・
なんだろう、この違和感・・・
何か見逃しているような気がする
(前半終了)
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