2021年2月18日木曜日

息切れ・呼吸困難の病態 〜組織に酸素が届くために〜

呼吸困難の原因は低酸素血症・低酸素症を起こす病態か、それ以外か、

というのがスタート地点です


息切れや呼吸苦は脳内で感じているため、低酸素をきたしていなくても息切れを自覚することはあります

よくあるのは、パニック障害や過換気発作でしょう

バセドウ病のように代謝がUPしている時も息切れを自覚することがあります



ですが、息切れ・呼吸困難の原因の多くは低酸素血症・低酸素症に伴う病態です


そのため、息切れや呼吸困難の鑑別疾患の挙げ方としては、

頻度の多い心疾患、肺疾患、貧血から考え、

次に神経筋疾患や不安症の病態を考えていくのがよいと思います


 

息切れを訴える人のほとんどは労作時の息切れで発症します


安静時には赤血球が肺胞の毛細血管を1/3ほど進んだ段階で、血液のPaO2は肺胞気とほぼ同じレベルに達します

安静時、血液が毛細血管を通過する時間は0.75秒です


運動時にはそれが0.25秒になり、拡散障害が背景にある場合は、

酸素化が完了しないまま毛細血管を通過してしまう可能性があります

                           参考:ウエスト呼吸生理学入門


これは拡散障害がある場合の労作時の息切れの病態ですが、

それ以外にも運動によって末梢での酸素需要が高まるため、酸素供給量を上げる必要があります



酸素供給量は心拍出量とヘモグロビン濃度と酸素飽和度によって規定されています


酸素需要が高まり、それに答えるために酸素供給を上げる体の代償の過程で感じるのが息切れです

息切れの際には、心拍出量を上げるため、脈が早くなって動悸を感じることが多いです


ヘモグロビンが少なくなってしまう貧血では、酸素の運び屋がいなくなるので、

酸素供給が需要に追いつかず、他で代償しようと心臓や呼吸への負荷がかかり、

息切れ・呼吸困難を自覚します


ヘモグロビンの濃度は正常でも、ヘモグロビンが機能障害を起こし、

酸素を結合・運搬できなくなってしまうことがあります

働かなくなったヘモグロビンのことを異常ヘモグロビン(COHbやMetHb、鎌状RBC)と呼びます


異常ヘモグロビン濃度が上昇してしまうと貧血と同様の病態となり、末梢の組織や細胞に酸素が供給できなくなります

こういった病態を機能性貧血と呼びます


なので貧血には量と機能の問題があることを忘れないでおきましょう

(まさに、満たされているけど足りないのです)



酸素飽和度を上げるために、呼吸回数や一回換気量が多くなり、

その結果、呼吸仕事量がUPします


もともと神経筋疾患が背景にある場合、呼吸仕事量UPにより呼吸困難を自覚する可能性があります


まとめ

・息切れや呼吸困難の原因の多くが低酸素血症や低酸素症、つまり酸素運搬を障害しうるものが多い

→心臓疾患、肺疾患、貧血から考える

 だが、低酸素がなくても息切れ・呼吸困難を自覚する病態(バセドウ病、パニック障害など)もある


酸素供給量は心拍出量とヘモグロビン濃度と酸素飽和度によって規定されている

→血ガスのPaO2に目を奪われすぎない


・ヘモグロビンの異常は量の異常だけではなく、機能の異常もある

→異常ヘモグロビン症:満たされているけど足りない病態


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