小児でよく言われることですが、高齢者でも当てはまります
ここは非常に重要で、普段といったい何が違うんだ?
という確認がおろそかだと、
治療や検査をやりすぎてしまうことに繋がります
この前は救急にレベル300で、急激な呼吸不全を呈した高齢男性が運ばれて来ました
SAHにともなう神経原生肺水腫などを考えましたが、
結局、ただの電撃性肺水腫でした
後から来た人に聞いたら、元々のレベルが、眉間に皺がよる程度とのことでした
スタートが分からないと、誤診に繋がります
ろくに話も聞かずに検査をすると、たいてい間違えます
そして検査をすると、主治医はなんだか、その患者を理解した気になってしまい、
病歴をおろそかにしがちです
もちろん、緊急性が高い疾患は別ですが、神経の疾患は病歴がとても重要です
神経疾患を診断する時の病歴はコツがあります
それは目の前の患者の伝記を作るくらいのつもりで、元気だった頃の話を聞く事です
もはや現病歴を超越して、その人の人生史を聞き出します
そうする事で、元気だった頃の患者さんが目に浮かんできます
その元気だった頃の患者さんから、今の患者さんを引き算すると、
プロブレムが見えてきます
そして、家族ですら、プロブレムと考えていなかった事を聞き出す事ができます
神経疾患は病気の発症時期が何時だったのか、
ということが分からないと診断できません
普通に病歴をとると、現在から過去に戻って、
物忘れが出たのはいつからですか?
と聞いてしまいがちですが、これでは上手に情報をひきだせません
例えば、趣味のマレットゴルフをやめたのはいつ頃ですか?
そしてそれはどうして止めたのですか?
と趣味や仕事にこじつけて聞いたりします
さて、急速に進んできた認知症や原因の不明の意識障害の時に、
よく鑑別にあがるのが橋本脳症です
ですが、誤解がたくさんある疾患です
例えば、
甲状腺機能の異常がある
髄液で異常が出る
画像で異常が出る
ステロイドが絶対に効く
といった感じです
Treatble dementiaの鑑別によく出てきますが、
精神疾患と見間違えたり、
小脳失調できたり、
プレゼンテーションに幅があるので、
鑑別にはとりあえず、あげてもよいと思います
コツはCJDだと思ったら、
橋本脳症を鑑別にあげることです
なぜなら、プレゼンテーションも似ていて、
CJDは治りませんが
橋本脳症は治癒が見込めるからです
コツはCJDだと思ったら、
橋本脳症を鑑別にあげることです
なぜなら、プレゼンテーションも似ていて、
CJDは治りませんが
橋本脳症は治癒が見込めるからです
ただし、橋本脳症は確定診断が非常に難しいです
NAE抗体は特異度高いようですが、
帰ってくるのは何週間後か、何ヶ月後になることが多いようで、
待っていられないので、見切り発車で治療に踏み切る事も多いです
診断的治療を否定するつもりはありませんが、
その前にしっかり他の疾患を除外しなければなりません
橋本脳症だ!と突っ走って、
ステロイド入れました!
治りました!
ステロイド入れました!
治りました!
では結果オーライではりますが、
ちょっと困ります
ちょっと困ります
橋本脳症と口にした時点で、
膨大な鑑別疾患を否定する旅が始まります
膨大な鑑別疾患を否定する旅が始まります
その旅の途中で、何か別の疾患が見つかれば、
旅は終了です
結局、橋本脳症まで、たどり着く人はあまりいません
たまたま、橋本脳症疑いまで行ったとして、
ステロイドの反応性を見て確定!というわけにもいきません
ステロイドに反応する疾患はたくさんあります
結核やヘルペスにまでステロイドを併用するので、
診断的治療は盲目的に行うと、何がなんだかわからなくなるので、気をつけましょう
せめて、後で検査を追加できるように、
ステロイド前に検体を保存しておきましょう
せめて、後で検査を追加できるように、
ステロイド前に検体を保存しておきましょう
ステロイド入れて治ったとしても
本当に橋本脳症だったのかなあ
他の可能性はないのかなあ
と疑い続けることが重要です
特にステロイドを減らして、悪化してきた場合は
副腎不全だった可能性があります
副腎不全もステロイドで著効しますが、
忘れがちなので、覚えておきましょう
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