自分は風邪をひくと、毎回副鼻腔炎になります
このように風邪と同じくらいコモンな副鼻腔炎ですが、
実は危ない副鼻腔炎もあります
副鼻腔から眼窩や頭蓋内に感染が波及してしまうと、
後遺症が残ったり、命に関わることがあります
副鼻腔を形成している骨をCTで見たことはありますか?
非常に薄い骨です
骨の向こう側は眼窩や頭蓋内です
よく考えると、こんな薄い骨で大丈夫か・・・?と思ってしまいますね
副鼻腔炎が合併症を起こすかどうかは、
部位が非常に大事です
つまり局所解剖を知らなければなりません
副鼻腔には4つあります
上顎洞、篩骨洞、蝶形骨洞、前頭洞です
それぞれ隣接する構造物が違うので、
起こりやすい合併症が異なるのは当然です
周囲に感染が波及する経路は主に2つあります
①静脈を介して
副鼻腔の粘膜からの静脈は弁がないので、感染が起こりやすいと言われる
②直接感染が波及
そもそも骨が薄い、さらに欠損している部位がある人もいる
まず上顎洞ですが、これはあまり合併症を起こしません
風邪ひいた後になる副鼻腔炎です
ですが、上顎洞炎は風邪やアレルギー以外の原因でもなります
それは歯の感染がこじれた時です
歯根部の炎症が波及し、徐々に骨を溶かして、
上に突き抜けてしまうと、上顎洞の到達します
風邪をひいていないのに、ひどい上顎洞炎がある人は、
歯源性の上顎洞炎かもしれません
齲歯(上の歯)がないか口の中を確認しましょう
上顎洞以外の副鼻腔炎は合併症の危険度が高まります
鼻性頭蓋内・眼窩内合併症をきたしやすい副鼻腔は、上顎洞以外の全ての副鼻腔です
それぞれの部位で起こりやすい合併症があります
前頭洞炎は頭蓋内への波及に注意
前頭洞の場合は、後方にある臓器は硬膜・髄膜・脳になります
そのため、前頭洞炎が最も硬膜下膿瘍や脳炎、脳膿瘍、髄膜炎をきたしやすいです
硬膜外膿瘍は骨と硬膜の接着が強いため、容易には膿瘍は広がりません
ですが、硬膜下に膿瘍ができた場合は、急激に感染が広がっていきますので、
緊急にドレナージ手術が必要になることもあります
蝶形骨洞炎は海綿静脈洞血栓症に注意
蝶形骨洞は下垂体の下にあります
横には海綿静脈洞があります
そのため、蝶形骨洞の炎症や感染の波及によって、海綿静脈洞血栓症を引き起こすことがあります
化膿性海綿静脈洞血栓症については次回詳しく説明します
篩骨洞炎は眼窩蜂窩織炎に気をつける
篩骨洞の横には眼窩があります
眼窩には視神経や眼動静脈、外眼筋、脳神経が含まれており、
残りの空間は脂肪で詰まっています
この眼窩内に感染や炎症が入ってくると大変なことになります
感染経路は目の周りの顔面の皮膚から入ってくるよりも、
回り込まれて、横っ腹(篩骨)から侵入されるイメージです
眼窩蜂窩織炎の多くが副鼻腔からの波及で、特に篩骨洞炎が一番多いと考えられています
眼窩内周囲は骨で覆われており、内部で炎症が起きた場合、
圧力の逃げ場が前後にしかありません
そのため、前方に圧力がくるので、眼球が突出します
そして後方への圧力の被害を受けるのが視神経で、
虚血に陥り、失明や視力低下の症状が出る人もいます
治療
・抗生剤は髄液移行性を意識したほうがいい時もあります
・投与期間に決まりはありません
・ドレナージが最も重要です
問題はドレナージをできるかどうか、どの科を呼ぶかどうかです
それぞれの合併症で呼ぶ科が異なります
硬膜下膿瘍や脳膿瘍の場合は、脳外科です
蝶形骨洞からの波及の場合は耳鼻科(もしくは脳外科)です
篩骨洞から眼窩蜂窩織炎の場合は、眼科にもみてもらう必要があります
歯源性上顎洞炎の場合は、歯科です
たかが副鼻腔炎とたかをくくっていると、
思いもよらない経過を辿ることがあります
副鼻腔炎のワーストシナリオも知っておきましょう
上記のほかにもう一つだけ急性副鼻腔炎で致死的になるものがあります
それは、ブドウ球菌や連鎖球菌のTSS、TSLSです
疑った場合は、夜間でも緊急ドレナージが必要です
副鼻腔炎に対してCTを撮っているのであれば、上顎洞以外に副鼻腔炎があるかを探してください
そして炎症所見があった場合は、合併症に注意しながら治療を行いましょう
まとめ
・副鼻腔炎には致死的であったり、後遺症が残る合併症がある
→鼻性頭蓋内合併症、鼻性眼窩合併症
・副鼻腔と一括りにせず、それぞれの解剖学的な位置関係を思い出す
→前頭洞は硬膜・脳、蝶形骨は海綿静脈洞、篩骨洞は眼窩へ炎症が波及しやすい
・副鼻腔炎のワーストシナリオを想像できますか?
→TSS(TSLS)でショックバイタル、髄膜炎・硬膜下膿瘍で意識障害
眼窩蜂窩織炎や化膿性海綿静脈洞血栓症で複視、眼球突出、頭痛、視力低下など
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