20歳 男性 主訴:発熱、頭痛、倦怠感(※症例は架空です)
現病歴:1週間前からの倦怠感、頭痛、発熱あり
3日前に近医でコロナPCR陰性だった
カロナール処方され帰宅
その後も発熱や頭痛が持続し、救急外来受診
ROS:咽頭痛なし、咳なし、鼻水なし
倦怠感あり、頭痛あり、光過敏なし、吐き気あり
既往:なし
内服:なし
生活:大学生
身体所見
38度の高熱あり、他のバイタルは安定
項部硬直なし
口腔内 硬口蓋に点状出血あり
扁桃は両側で軽度肥大 白苔なし 発赤なし
両側後頸部リンパ節腫脹あり 圧痛なし
Hoagland's sign陽性
腹部 圧痛なし 肝臓2横指触知
血液検査 WBC 16000、Ly増多あり、異型Lyあり
AST 280、ALT 290、LDH500、γGTPとALP 軽度上昇あり、PT INR 1.16
髄液検査 蛋白や細胞数増多なし
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生来健康な20歳 男性の1週間持続する発熱や頭痛、倦怠感です
咽頭痛があれば、IMを疑いたくなりますが、咽頭痛はありません
ただ、後頸部LN腫脹やHoagland's sign陽性であり、EBVのIMで良さそうな印象です
血液検査でも異型Lyがみられ、軽度の肝障害を認めます
こういった症例ではEBVの抗体を出すことになりますが、すぐには結果が判明しません
肝障害がメインになると、他の急性肝炎をきたすウイルス疾患や自己免疫性肝炎も鑑別にあがります
全体像からはEBVだと思うけど、
データだけ見ると、CMVやHIV、HAV、HEV、HHVも鑑別みたいな状況になります
どこまで検査を提出するかは、文脈次第です
こんなフローチャートもありますが、微妙ですね
Lennon P, Crotty M, Fenton JE. Infectious mononucleosis. BMJ. 2015;350:h1825.
ということで、今回はEBVについてです
EBV初感染ではIMの症状を呈することが多いです
つまり、発熱、扁桃炎、リンパ節腫脹です
IMの90%がEBVとされ、
残りの10%が、CMV、HIV、トキソプラズマ、HAV、HHV6などです
IMの中には、典型的な咽頭炎症状がない場合もあります
up to dateには全身型と記載されていました
CMVの場合、咽頭炎症状が目立たないのはよく知られています
EBVでもそのようなプレゼンテーションはあるということです
そして、IMの症状がなく、flu likeな症状(発熱、倦怠感)だけの場合には、
肝炎を起こしている可能性があります
EBVの肝炎はIMの症状がないことが多いです
IMの症状がないからといって、EBVでないとは言えません
EBV感染はほとんどが自然軽快しますが、
まれでに合併症を起こすことがあります
合併症には、急性期と慢性期のものがあります
EBVでも致死的な経過を辿ることがあるので、ワーストシナリオを知っておきましょう
まずは気道閉塞が一番怖い合併症です
子供に多く、ステロイドを使うことがあります
ステロイドを使うと、外科的な気道確保を免れる可能性もあります
窒息しそうなくらい扁桃腫大がひどい症例はステロイドを考慮してください
容量については、決まったものはありませんが、高用量のコルチコステロイド
(例、6時間ごとにデキサメタゾン0.25 mg / kg)の症例報告があります
Ear Nose Throat J. 1995 Sep;74(9):630-8.
外傷がなくても発生します
脾腫は50%くらいにみられ、人によっては腹部の違和感や腹痛が出現します
扁桃炎で溶連菌かEBVか迷うことがあったら、
身体所見で後頸部のLNを念入りに触るのと、
脾腫があるかを確認してください
脾腫があるかどうかは、診察のみで言い切れる人は少ないと思います
超音波検査で確かめることをお勧めします
脾腫の診察については、J hospitalのページにいいまとめがありますので、ご参照ください
EBVの脾破裂は2-3週間目までに起こることが多いです
3週間目以降に破裂することはまれです
いつからコンタクトスポーツをしていいかは議論があるところですが、
少なくとも4週はまった方が良いでしょう
EBVの脾腫の場合、外傷がなくても自然破裂します
EBVでフォロー中の人が、
お腹を急に痛がった場合は、造影CTで脾破裂がないか確認してください
そして脾破裂が最初の症状になる人もいますので、
外傷のない脾破裂の人を見たら、EBV感染を考えます
他には血液系のトラブル、肝炎、神経のトラブルがあります
IMに肝胆道系酵素の上昇が見られるのは、よくある話です
ただ、値がどんどん上がっていったら、流石に心配になりますよね
EBVの肝炎だと思うけど、他のウイルス性の肝炎でないとは言い切れないし、
今後、進行してきたらどうしよう・・・と思いながら、フォローします
EBVの肝炎の場合、ASTやALTの上昇は正常値の5倍くらいまでです
顕性の黄疸をきたす症例はまれです
ただ高齢者の場合は、若年者よりも黄疸が出やすいようです
EBVの肝炎の場合、自然に軽快することが多いです
一番やってはいけないのは、EBVの肝炎だろうと、
たかをくくって様子をみていたら、どんどん肝不全が進行し、
実はHBVの急性肝炎の劇症肝炎だった
とかはあってはなりません
EBVの肝炎かどうかは最初はわからないので、
他の肝炎ウイルスのマーカーもチェックすることが重要です
どんな肝炎であっても大事なのは、
劇症化の徴候を見落とさないように、
意識レベルやPT、Tbilなどをこまめにチェックすることです
・EBVのIMにはいろんなプレゼンテーションがある
→扁桃炎がないパターン:CMVと鑑別になる
肝炎でくるパターン:他の肝炎ウイルスと鑑別になる
皮疹が出るパターン:麻疹、風疹、パルボと鑑別になる
・EBVのIMでも致死的な場合がある
→扁桃腫大に伴う気道閉塞や脾破裂、血球貪食症候群、肝不全など
ステロイドで治療することが多い
・EBVの肝炎は自然軽快することがほとんど
→他の肝炎を見落とさないことが大事
参考文献:Fugl and Andersen BMC Family Practice (2019) 20:62
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