2021年6月3日木曜日

若年者のACSまとめ 〜4象限で考える〜

 若年者のACSの考え方

ポイント

・若年者のACSでもプラーク破裂がcommon

・冠動脈の形態で考えることが違う

・遺伝性があるかどうかも大事

-----------------------------------------------------------------------------------

若年者のACSをみたら


若年者に心筋梗塞が起こることはまれです

そのため、徹底的な評価が必要になります


若年者の心筋梗塞の原因は、

SCADや川崎病、攣縮など色々あります


たくさんあって混乱しそうですが、4象限で考えます


      


①動脈硬化リスクはどれくらいあるのか

②冠動脈の形態


この2つを軸にして疾患を分けると、頭がスッキリします


①動脈硬化リスクはどれくらいあるのか


若年者であっても動脈硬化リスクがあれば心筋梗塞を起こします

若者であってもcommonなものは、commonです


特に家族性の高コレステロール血症は見逃したくはありません

家族歴を確認しましょう


プラーク破裂であれば、ステント入れて、抗血小板入れて、

動脈硬化のリスク管理を行う通常の治療でOKです


動脈硬化リスクがなければ、冠動脈の形態をみて鑑別を考えます


②冠動脈の形態


次に考えることは、冠動脈造影の結果次第です

冠動脈造影で明らかに閉塞している部位がなければ、MINOCAという概念が提唱されています


優位狭窄がない心筋梗塞(50%以上の狭窄がない)はMINOCAと定義されています


MINOCAにはいろんな疾患が含まれています



MINOCAの原因には、冠動脈疾患、心筋疾患、非心臓疾患があります

MINOCAと判断したら、原因疾患を特定する必要があります

疾患ごとに治療法が異なるためです



冠動脈の形態で考えること

(1)冠動脈がツルツルできれいなパターン


冠動脈がツルッとしていて、閉塞も狭窄もなければ、

 攣縮や心筋炎、微笑循環障害かもしれません


攣縮を疑った場合は、

①何か薬を使っていないか、②何をしている時に起きたか、

を詳しく聴取します


薬の場合、特にカインやアンフェタミンの頻度が多いです


もちろん、他の危険ドラッグや脱法ハーブといった他の違法薬物でも起こり得ます

アルコールも原因になります


攣縮の場合は夜間〜朝に多く、感情のストレスが誘因でも起こります



攣縮を疑った場合は、誘発試験が必要になります



(2)明らかな途絶パターン


他の冠動脈に問題がなくて、いきなり途絶えている冠動脈があれば、塞栓を疑います


冠動脈塞栓の多くはAfです


Afがなければ他の過凝固病態のチェックが必要です

APS、プロテインS、C欠損、トルーソー症候群などです


冠動脈に塞栓がある時は他にも飛んでいることが多いので、

脳梗塞や腎梗塞がないかも注意が必要です


(3)動脈瘤や狭小化が目立つパターン


血管炎(川崎病)や血管の壁の異常を起こすような疾患群を疑います

非炎症性に血管壁の異常を来す疾患群は、

FMD、エーラーダンロス、マルファン、NF1です


これらは遺伝すること多いですが、家族歴がはっきりしなかったり、

身体所見の特徴がない場合は原因不明になりやすいです


炎症性か非炎症性かは、血液検査で炎症反応の値を確認します


現時点で炎症がなくても枯れた血管炎(血管炎の名残)の可能性もあり、

これまでの既往や病歴で原因不明の発熱の期間がなかったかどうか、聴取します


他の血管にも動脈瘤がないか確認します



(4)一箇所だけ狭小化パターン


一箇所だけ狭小化しているようならSCADを疑います

特に若年女性の心筋梗塞は半分近くがSCADという報告もあります


SCADかプラーク破裂かは、IVUSを行うことで判別が可能な場合があります





若年女性や妊婦の心筋梗塞は、まずはSCADを疑ってください

SCADの治療は、普通のプラーク破裂と異なります


SCADの場合、プラーク破裂の時のようなステント治療は、

病態を悪化させることがあり注意が必要です






冠動脈の形態だけでは診断がつかなければ、

左室造影、IVUS、OCT、心臓MRI(造影)を行います


次に何をするかは疑っている疾患次第です


実は冠動脈疾患ではなく、限局性の心筋炎やタコツボ型心筋症といった心筋疾患の可能性もあります




若年者のACSの場合、家族歴の確認も重要です

家族歴がある場合、皮膚や見た目がヒントになることもあります


ただ、それぞれの疾患の皮膚所見や特徴がないこともあるので、

家族歴や疾患の特徴がないからといって、除外はできません






まとめ
・若年者のACSではプラーク破裂がcommon
→動脈硬化リスクの確認が大事、家族性高コレステロール血症を見逃さない

・冠動脈の形態で考えることが違う
→冠動脈に狭窄なければ、攣縮や微小循環障害を
一部の狭小化であれば、SCADを
複数の動脈瘤や狭小化であれば、血管炎や壁異常を来す疾患群を
いきなり途絶していれば、塞栓を考える

・遺伝性があるかどうかも大事
→家族性高コレステロール血症、NF、エーラーダンロス、マルファン


0 件のコメント:

コメントを投稿

気腫性骨髄炎

 

人気の投稿